塾長です。
昨日は、Daily Journal年次総会を開き、その出し物として（？）チャーリー・マンガー（Charlie Munger）がQ&Aをやっていたので、聞いてみましたヨ。
一応補足しておきますと、チャーリー・マンガーはウォーレン・バフェットと共にBarkshire Hathawayを大きくした投資家・大富豪。彼はDaily Journalの会長も務めていて、その年次総会では、Daily Journalとは関係の無い、一般的な投資、経済、政治などの質問にも回答する。Barkshireの年次総会でバフェットがQ&Aをやるのの、マンガー版と考えてもらっても良いと思います。Daily Journalは名前の通り新聞社なのだけれど、投資会社の側面もある。また、テクノロジー部門を持っており、裁判所向けソフトウェアを開発・販売している。
こちら、その動画：
マンガーは中国にビジネスチャンスがあると思っている人なので、Daily JournalはAlibaba株をたくさん買っている：マンガー氏のデイリー・ジャーナル、アリババ株保有を２倍近く増やす - Bloomberg。冒頭はその辺りの質問が多かった。
ポイントは、既に各種報道に出ていますので、そちらをどうぞ。例えば、日本語なら、これら：
チャーリー・マンガー氏、米中関係悪化を憂慮 仮想通貨を批判 | ロイター
暗号資産は禁止を、ベンチャーキャピタルも行き過ぎ－マンガー氏 - Bloomberg
英語だと、これら：
Charlie Munger Blasts Traders, Slams Crypto, Rings Inflation Alarm
Charlie Munger: We are never going back to a five-day work week in the office
下の「人々はオフィスに戻ってこない」説は、ジム・ビアンコも唱えていましたネ※１。米国はそんな雰囲気なのでしょう。皆さんの職場はいかがでしょうか。
と、ここで終わってしまってはblogとして成立しないので、最後の方のQ&Aで、現代資本主義の本質的な部分に触れていたので、そこを抜き出しておきましょう：
［1:59:20］株式市場に悲観的でしょうか、楽観的でしょうか？
・楽観的であるべきだ。人間の技術的文明を作り出す能力。過去100年、1922から2022まで。ほとんどの技術がその100年でできた。その前の100年に近代性はあったが。さらにその前の100年は、それ以前の数千年と同じようなものだ。人生は苦しく短かった。新聞も、現代の薬品も、エアコンもない。人間に必要なものが得られなかった。そこから蒸気機関、蒸気船、鉄道、農業技術向上、上下水道ができた。そして、1922年からの100年で、電力、薬品、自動車、飛行機、レコード、映画、エアコンなどを得た。かつては、3人の子供が欲しければ6人産まなければなかなかった。3人が幼少期に死ぬからだ。現代文明が成し遂げた事は素晴らしい。ほとんどが過去100年で作られた。
問題は、基本的なニーズが満たされてしまった事だ。米国において、貧困層の主要な問題は肥満だ。生活レベルが上がり、自由度が増し、人種差別が減り、大きな問題が減って来たにもかかわらず、人間は昔より不幸を感じるようになった。その理由は簡単。世界は強欲（greed）で動いているのではなく、嫉妬（envy）で動いているのだ。神はモーゼに隣人の妻を羨むな、ロバでさえ妬むなと言った。それは自然に組み込まれている。大恐慌時代は悲惨だったが、その時にオマハを歩ている方が、（今の）ロサンゼルスよりも安全を感じた。全てが600%向上しても、人々は不幸だ。なぜなら、周りの人がより多くを持っているから。私は妬みを克服した。もう誰が何を持っていても気にしない。政治家は妬みを利用する。妬みの炎にガソリンを注ぐ。そして、金持ちの思いあがった出費。誰にロレックスの時計が必要か？盗まれるためか？しかし、誰もがそんなカネの使い方をしたがり、それが現代の資本主義社会を駆動している。私から若者へのアドバイスは「そんな事はやめておけ」だ。バカげた出費に幸福は無い。しかし、それが文明を動かしている。世界が良くなれば良くなるほど、人々は満足感を得られなくなる。奇妙だが、それが起きていることだ。
最初は、現代に成し遂げた科学技術の素晴らしさから、これからの未来は明るい、経済も良くなる、と言いかけていたのが、見栄っぱり消費社会とその中で不幸になる人間の話に変化。最後は、そんなバカげた行動を取る人間が経済を動かし、おかげで株式投資からリターンを得られているというオチ。喜劇ですナ。
※１：
