塾長です。
昨日(米国9/11)の米株は、討論会でのトランプ劣勢※+高めのCPI(=9月FOMC利下げ幅が小さくなる)により大幅に下げて始まり、なぜか午前11時ごろに反転し、一直線に上昇。何があったのでしょう?
※:もう少し正確に言うと、トランプが「相手の言葉を大声で遮り、持論をまくしたて、優位に立つ」といういつもの戦術を封じられ(?)普通の討論になった/トランプが元気なく見えた、という感じ。
S&P500、5,554(+1.07%)
Nasdaq、17,395(+2.17%)
【米国市況】テク主導で株上昇、CPI後の売り克服-142円40銭台 - Bloomberg
原油、67,31
10年債、3.6530
ドル円、142.4180
Bitcoin、57,401
8月 CPI[前月比]、0.2%(予想0.2%)
同[前年同月比]、2.5%(2.6%)
8月 CPIコア[前月比]、0.3%(0.2%)
同[前年同月比]、3.2%(3.2%)
米CPI、コア指数が予想外に伸び加速-大幅利下げの可能性低下 - Bloomberg
サービス分野で最大部分を占める住居費は前月比0.5%上昇と、1月以来の大幅な伸び。2カ月連続で加速した。持ち家のある人がその家を賃貸する場合の想定家賃である帰属家賃(OER)も同じ伸び率となった。
住居費以外では航空運賃や衣料品、未就学児保育サービスなどが全体の伸びをけん引。自動車保険とホテル宿泊費も引き続き上昇した。
なし。
なし。
ハリス氏とトランプ氏対決、5770万人視聴-バイデン氏の討論会上回る - Bloomberg
トランプ氏とバイデン氏が対決した6月の討論会は視聴者数が5130万人だった。過去最も視聴された討論会は、2016年に行われたトランプ氏とヒラリー・クリントン氏の初対決で、8400万人が視聴した。
米大統領選討論会、支持者の反応は対照的-マスク氏は司会者を批判 - Bloomberg
こちら(↓)が討論会の映像;
■特になし。
■〆は弱気派マイク・ウィルソン。CPI発表直前のインタビュー;
ーマイク・ウィルソンは次のように書きました。『債券市場がFEDが後手に回っていないと信じ始め、成長に関するデータが反転し大きく改善するか、追加的な政策刺激策が導入されない限り、株式市場が今以上にリスクオンになることは無い』
まずこれをイジっていきたい。FFレートと2年国債金利の差はどれ程重要ですか?
・債券市場からシグナルを受取っている。債券市場はFEDが何をすべきか?と示す良い指標となっている。2021年の時期も、2年国債がFFレートを上まり、FEDの利上げを示していた。今は逆のことが起きている。人々は「株式市場は良好だ」と言うが、内部を見ればそれは真実ではない。保守的な株(defensive stocks)がとてつもなく良好だ。株式市場は債券市場から合図を受取っている。その合図とはハード・ランディングとはならないが、成長には失望され続けるという事だ。4月以来、私は何度もこの番組に出て、成長に関するデータは非常にネガティブである、雇用データはより悪化している、と言ってきた。株式市場がそれにどのように反応したかというと、私が呼ぶところの”質の良い成長株(quality growth)”から”質の良い保守的株(quality defensives)”に転換した。その転換は5月に起こった。昔からあるサイクルの後半の動きである。全てが沈んでいるように思える。我々はまるで消費者がテストのキーとなるものを渡してくれるのを待っているようなものだ。これがどのように終わるのか?について。我々にはそれが分からない。しかし
ー株式市場が上昇するためには、あなたは次の2つのうちどちらかが起きなきればいけない言っている。FEDがアグレッシブに利下げするか、労働市場が素早く改善するか、だと。どちらがベースケースなのか?
・FEDは先手を打つことができるが、2つの事に制約されている。インフレは制約ではない。私に言わせれば、インフレ問題は終わった。FEDが打ち破った。問題は、為替市場である。もしFEDがアグレッシブに利下げしはじめれば、円・ドルの関係にストレスがかかる。彼らはそれに注意すべきだ。もう一つは、もしFEDが利下げを50bptで開始したとすると、ソフトランディングの可能性はとても下がる。彼らは気付いているが、そのシグナルを送りたくないのだ。FEDは難しい立場に立たされている。彼らは過去数年間難しい時期を乗り切ってきたが、今は市場が彼らに圧力をかけている。私はFEDが来週何をしようと気にしない。私は市場の反応を心配している。FEDが多分25bpt利下げをしたあとの行動、プレスカンファレンス後の行動を。
ーあなたは日米金利差について言及した。巻き戻しが起きるというのは、どれくらいのレベルを想定しているのか?
・特定のレベルは無いのだが、140の下の方を守ろうとしているようである。1ドル142円くらいだろうか。もし130台に入れば、139とか139になれば、他の市場への圧力を生むかもしれない。
ーあなたはquality growthからquality defensiveへのシフトについて語った。私はそれらの名前に混乱しているのだが、あなたのgrowth、defensiveとは何であろう?nVidiaはどこに含まれるのか?AIトレードがインフレするなか、テックはどこに向かうのか?Quality defensiveとは何か?
・defensiveとは昔からあるdefensive sectorsのことだ。公益、生活必需品、ヘルスケア。債券と正の相関があるものだ。それらは4月までパフォーマンスが悪かった。それまではquality growthが買われていた。
もう一つ起きているのは、AIの夢の輝きが剥がれてきた。私はそれを半導体株で測っている。nVidiaだけでなく、半導体全体だ。多くの半導体株が下がってきている。私にとっては、それは理にかなっている。過熱され過ぎていた(overcooked)。AIが終わったことを意味しているのではない。これについては多くを書いて来たのだが、我々はAiが生産性を短期的に劇的に変えるとは思っていない。これは長期のストーリーである。どうやら打ちのめされたようだ。AIというテーマが無くなった今、市場は新しいテーマを探している。成長株側には何もない。なので、次のテーマが見つかるまで、defensiveで、質の良い資産に隠れている。それが良い結果をもたらすのか、悪い結果となるのかは分からないが、彼らはそれらの資産に隠れるのである。
ーあなたはインフレ問題が終わったと言った。今日CPIが出る。もしCPIが高く出たら、市場のボラは上がるのか?もし弱かったら、市場は50bptの利下げを期待するのか?もしくはFEDが予想する以上に景気が悪化していると捉えるだろうか?
・私が「インフレ問題は終わった」と言ったのは、インフレの変化率が収束した、という意味だ。それは株式市場にとって、率直に言えば、FEDにとってもだ。インフレが終わっていないというのは、価格レベルの話である。価格レベルはビジネスや消費者を締め付けている。まるで万力のように。その意味では、インフレは終わっていない。しかし、もしホットな数字が出れば、私はそのような予測はしていないが、株にとって悪いだろう。もし今日CPIがホットに出れば、FEDは突然後手に回ることになる。彼らはある意味スタックしてしまう。もしとてもソフトな数字が出れば、我々の古い主張に戻ることになる。すなわち、価格決定力が無くなった、ということだ。これは針の穴に糸を通すようなものだ。breakevenは2%である(多分、5 year breakeven inflation rateのこと。昨日9/11時点、1.90)。こういったものは急には止まれない。下側に行く(2%を下回る)リスクがある。それは債券にとっては良いが、典型的には株にとって悪い。それが今の市場である。市場はこれら全てを理解しているだろう。FEDは来週25bptの利下げを決め、さらに50ではなく25bptの利下げをするとシグナルを送るだろう。FEDはバランスシートをどうするか?それが大きなワイルドカードだ。よりアグレッシブに、より速くQTを終わらせるだろうか?流動性を供給する他の方法を容易するだろうか?そうなれば強気なケースとなる。そこに大きな驚きがあるかもしれない。もしさらなる流動性が供給されるか?だ。
ー来週(のFOMC)が終われば、次は選挙に注目が行く。Goldman、RBCはトランプが勝てば、彼の減税により企業利益が上昇すると言っている。ハリスは28%に増税すると言っている。これらの提案をもとに、あなたは来年の企業利益をどのように予想しますか?
・経済がソフトランディングするとすれば、我々はそうなると予想しているが、そうならないかも知れない。ちなみに、これは今後6~12か月(の株にとって)、選挙よりも重要だ。
さて、経済がソフトランディングしたとしよう。我々の見立てでは、トランプは成長にとって良い。これは債券にとって悪く、株にとって良い。
ちなみに、昨日大統領候補者討論会の間、賭け市場はハリスに傾き、株先物は少しだけ動いた。しかし、私は、株式市場はトランプの方を歓迎すると思う。トランプの勝率が上がっているあいだ株は上がり、逆も真である。
ーハリスになれば、債券にとって良く、株に悪いということか?
・論理的にはそうなる。限界点において、そのような配置になっている。その理由は税金だ。税金は議会の賛成が必要だ。私にとって税金は大きな問題である。関税ではない。どちらが政権を取っても関税をかけるだろう。移民に関しても、どちらの党も何らかの方法で対処するだろう。税金が問題なのである。トランプは減税を主張し、ハリスは増税だ。増税は株にとって悪く、債券にとって良い。
ー最後にこれを聞いておきたい。公益は本当にdefensiveと言えるだろうか?今年に入って20%も上昇した。AI関連したアゲだ。
・とても興味深い質問だ。我々は公益がAIから恩恵を受けるといった最初の一群である。2月、3月のことだ。正直に言って、上がり過ぎ(over done)だと思う。しかし、今、公益は債券市場とともに動いている。短期的には、公益のdefensiveな面がパフォーマンスを左右するだろう。公益には興味深い点がある。公益のバランスシートは、典型的には素晴らしくはない(注:借金が多い)。なので公益には注意しなければならない。もしハードランディングとなれば、公益はとても低い値で取引されることになる。リスナーには注意してもらいたい。もし公益が低く取引され、株式市場全体が跳ね上がっていないのであれば、それは悪いサインである。ハードランディングに近づいているという事だ。それは今のところ起きていない。通常ボラの低い株が指数関数的に上昇していて、株式市場全体の上昇無しにそれらがハードに売られたら、ハードランディングを心配する。それは今日の時点では起きていませんよ。
ということで、意訳してまとめると・・・、
・AIブームは去った。それは半導体株が下がっている事から判断できる。
・AIから去った投資資金は、次のテーマが見つかるまで、質の良い保守的な資産に隠れる。
・インフレ率の上昇はピークを過ぎ、5年後には2%になるのが見えている。2%を下回るリスクさえある※1。その意味でインフレ問題は、市場にとっても、FEDにとっても終わった事。しかし価格レベルという意味では企業も消費者も苦しんでいる。
・FEDが適切な利下げをして、経済はソフトランディング(減速するだけで、景気後退にはならない)がベースケース。
FEDは景気減速を避けるため大幅な減税をしたいのだが、円キャリートレード巻き戻しが怖くてできない。現在は142円辺りが基準となっていて、130円台に入れば巻き戻しが起きる※2。これにより、FEDが後手に回り、景気後退する可能性がある。
・トランプ勝利なら株アゲ。ハリスならサゲ。
・公益はdefensiveであるが、景気後退となれば値が下がるので注意せよ。
だ、そうです。
※1:トム・リーも同じようなことを言っているが、ジム・ビアンコなどは「好景気が続くから、インフレ率は3~4%で高止まる」と言っている。
※2:昨日紹介したエド・ヤーディーニとは見解が異なる。ヤーディーニは「日銀は何度も利上げするぞ」とメッセージを送っているので、キャリートレードしている投資家は日本の利上げ(日米金利差縮小)を織り込み済みだ、これ以上市場を揺るがすような巻き戻しは起きないだろう、と言っている。
本当にFEDがキャリートレード巻き戻しを恐れているのであれば、日銀に「利上げするな」と命令するでしょうネ(適当)
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