塾長です。
先日リンクだけ貼った、ジェフリー・ガンドラックのインタビュー(1/11付け):
ー前回は9か月まえだった。4/27だ。あなたは、最安値を試すだろう、と言ったが、そうならなかった。S&P500は71%高だ。今の市場をどう見ているか?
ガンドラック:バリュエーションは非常に高い。巨額の刺激策に支えられている。過去に比べても高いうえに、上がり続けている。FEDのおかげだ。FEDがゼロ金利を続け、バリュエーションを押し上げている。さらに、多くの人が理解しなければいけないのは、他の多くのものが、(米国)株に比べて、逆転しはじめている事だ。例えば、新興国(株式)市場は、米国をアウトパフォームしている。ValueがGrowthをアウトパフォームしている。
いくつかは納得できる。11月のRussell2000は、年間のリターンほぼ全てを叩きだした。たった1か月で。この10年、米国(株)が最も成長する市場だった。それが変わってきている。Super6(FAANG+Microsoft)は、もうアウトパフォームしていない。これは興味深い。これは短期の現象だとは思えない。
もちろん他のものも変化している。金利が下げ止まった。我々が前回会話した3月、4月、30年もの国債金利は71 basis pointsだった。今はそれより100 basis points高い。イールドカーブはスティープ化した。ドルは落ちている。米国(株)はアンダーパフォーム。資産を分配する人にとって、これらは重要だ。
ービッグテックがアウトパフォームしなくなり、上昇する銘柄が広がったのは良いことだ。金利もまだ低い。市場はvulnerabelだと思うか?FEDが手を引くとは思えない。
・全ての市場は、次の事実に対してvulnerableだと思う。サステイナブルかどうか分からないが、CPI Headline Numberは大きく上昇するだろう、年中盤までに。DoubleLineではモデルをもっている。5月もしくは6月のレポートで、Headline CPIが3%に近づく、もしくは3%になるだろう。インフレを起こしたいFEDで、No2のチャーリー・エバンスが先週「We are in it to win it」と言った。※1彼らはインフレを起こそうとしている。5月、6月にCPIが3%もしくは2%の上の方になったらどうなるか。10年債は1%を少しだけ超えた程度だ。FEDの介入なしには、このレベルは保てないだろう。なので、私は金利は継続的に上昇すると思ってる。FEDがイールドカーブコントロールを導入するまでは。今の金利水準が上昇し続けるとは思えない。
ー金利が上昇した場合の市場の反応を心配しているわけですね。モハメド・アラリアンの今朝の発言を読むので、あなたの反応が聞きたい。「もし警告シグナルを探しているなら、それは債券市場から来る。2年と10年国債の金利差と、2年と30年国債の金利差だ。それは間違った理由で上昇している。経済成長が理由ではなく、買い手が手控えているのとインフレを恐れているからだ。5、6日間の間に、さらに20 basis point広がったとしたら、黄色信号の点灯だ」
・最後の部分、なぜ20 basis pointsなのか分からないな。
少しズームアウトして見てみようじゃないか。我々、DoubleLineは長い事イールドカーブのスティープ化を探していた。それは起こっているわけだが。2018、19年に逆転した2年と10年金利差が、今はスティープ化している。インフレーションがゲームチェンジャーとなる。インフレは起こるだろう。TIPS市場と通常の国債市場のbreak-eventとなるポイントは大きく低下した、3月、4月の時点で。経済的災害が起こったから。そして、break-eventは完全に回復し、今は上昇している。チャーリー・エバンスの発言を再度引用したい。We are in it to win itだ。FEDはインフレを望んでいるのだ。これをコンテクスト化する一つの方法は、FEDのゴールだ。金利をイールドカーブの上に持っていきたいのだ。30年国債までも。真の負債はGDPの20%に達している。我々はリセッションを抜け出していない。辞書の定義では、2四半期成長したら、リセッションを出たことになるが、それはガンドラックの定義ではない。ダンドラックの定義は、名目GDPと実質GDPが過去の値を超えた時だ。それはまだ起こっていない。
巨額の債務がある。それがドルを弱くする。それがインフレの推進力となる。インフレ率が上がるのだ。多くの人が分かっていないは、コアCPIは過去25年、3%を超えていない。コアCPIは25年間抑制されている。これを40,000フィートの高さから見ると、多くの長期トレンドがベースとしているものが変わるのだ。インフレが巨大なゲームチャンジャーとなる。株と債券の関連性が無かったのが、壊れるだろう。
2017年、もうずいぶん昔の事だが、とても株やその他のボラが低かった年だ。特に株。Vix Indexは9.85を指していた。その時俺は言った。2017年のとてつもなく低いボラタリティーは変化するだろうと。15に上昇するだろうと。その時、CNBCのゲストに笑いものにされた。そいつは構造的変化があって、VIXは2度と15を超えないと言っていた。明らかに間違っていたわけだ。それ以来VIXは毎年上昇し続けたのだから。25年間インフレのボラが低かったのが、変化する。巨額の債務が、CPIをデフレに持っていく可能性もある。しかし、FEDはそれを望んでいない。インフレ率を全ての金利よりも上げたいのだ。
興味深いのは、平均時給の伸びが、30年住宅金利よりも高い。言ってみれば、マイナス金利で家が買える。社債は、歴史上初めて、マイナス金利となった。私がこれが偶然だとは思わない。アクシデントだとも思わない。これは設計されたものだ。株のバリュエーションは鼻血が出る程高いが、これで正当化される。他のものも同様だ。
ーチャールズ・エバンスはwe are in it to win itと言ったかも知れないが、FEDはインフレ率を急激に上昇させないのでは?今朝の我々の番組で、ジム・リーベンサルは、10年債は1.3から1.5が上限だと言っていた。今とそれほど変わらない。それ以上上がるのであれば、FEDは介入するだろうと。その考えに同意するか?
・(FEDが介入する)レベルは分からない。内部情報は持ち合わせていない。FEDはあらかじめ考えていないのではないか。しかし、彼らは喜んでイールドカーブ・コントロールをすると言っていた。それは金利を固定するという意味だ。大きな疑問は、それがどのようなレベルになるかだ。私は、直観だが、FEDは10年債を1.5%以上にさせると思う。その数字は分からない。もしかしたら、2%かも。
しかし、Headline CPIが今後数か月で2.5%以上になるとするならば、CPIは10年債よりも高いとするならば、FEDは放っておくだろう。10年債利回りがHeadline CPIもしくはコアCPIを超えるのが、FED介入、イールドカーブコントロールの引き金になるのではないか。今はそれが問題になっていない。10年債金利はHeadline CPIに近づいてもいないし、Headline CPIは上昇しているから。私の推測だが、ジムが言った数字(1.3~1.5%)は少し小さすぎる。
ーパウエルとイエレンの組合せは、どうなるだろう?
・一般に、イエレンはpuffballで、緩和的だと言われているが、私はそう思っていない。彼女がFEDの議長だったとき、金利を上げた。何度も金利を上げることに賛成している。彼女がFEDにいるとき、金利を上げることに反対した事はないのではないか。バイデンとイエレンとジョン・ケリーが組んで何かするというのは興味深いアイディアだが、イエレンの記録から見るに、彼女が融和的政策をファシリテートするとは思わない。
ーしかし、今の状況を考えるに、融和的にならざるを得ないのでは?
・そう思う。FEDは、数年に渡ってゼロ金利を続けると、何度も言っている。2010年か11年にバーナンキが3年ゼロ金利を続けると言ったが、市場は信用しなかった。信じるべきだった。なぜならそれ以上ゼロ金利は続いたのだから。これがインフレ期待を作り出す。単にインフレ率が上がるだけではない。農産物コモディティーの価格は長期間に渡って抑制されてきた。それがボトムアウトして、急上昇している。食品のインフレは、最悪だ。最も貧しい人達が影響を受ける。食品インフレが社会不安を引き起こす。
再度40,000フィート上空から見た景色に戻るが、これらが私が何年にも渡って語ってきたことだ。制度的な解体を経験するだろう。あなたは、Super6がアウトパフォームしていないのは良い事だと言ったね。同意するよ。しかし、彼らが成長した事が、これらの社会的問題につながっているのだ。富の不平等を引き起こした。テクノロジー・セクターの就業者は、全体の2%でしかない。しかし、株式市場に占める割合は38%だ。直近までのSuper6の株価上昇でストレッチされたわけだが。今テレビで見ている光景は、Forth Turning※2の結果だ。ニール・ホウ(Neil Howe)の本からの引用だ。社会はテクノロジーの急激な進化と、硬直化した財産のディスコネクトに対処しなければならない。
ーもっとも信念を持っているトレードは何か?去年の春に会話したときは、S&Pをショートしていた。小型株は急上昇した。株において、highest conviction tradeは何か?
・新興国株。特にアジアだ。私が株式市場に身を置くとしたらね。私が推奨しているポートフォリオは、ここ数か月に渡って非常にうまく行っている、25%新興国株(特にアジアを選好)、25%現金・デフレに対応するため、25%長期国債・デフレリスクへの対応、25%不動産かBitcoinかゴールドなどの真の資産。50%はデフレに対応でき、50%がインフレに対応できる。
ー債券ではどうか?
・銀行ローンだ。銀行ローンは去年悪かった。値段ではマイナスにならなかったが。これらは変動金利型の資産。興味深いのは、長期金利が上昇する時に好まれる。そして長期金利は上昇している。また、短期金利はゼロである。なので、金利がさらに下がる可能性は無い。上昇するのみ。過去18か月、銀行ローンは、投資信託、ETFの観点から言うと、カネは流出した。私は今がキャッチアップする時だと思う。
他の所は危険だ。FEDのおかげで。投資適格社債利回りが国債と同じ。ハイイールドはコロナ前に戻った。一般投資家はclosed-endのファンドを買うことで、投資できる。
ーBitcoinを信じているのか?
・1月からWebcastをはじめた。Doubleline.comで聞けるよ。去年、私のhighest conviction ideaは、ドルが弱くなる、Bitcoinが上昇する、だった。そのときBitcoinは5,000ドル。Bitcoinが23,000ドルになったとき、熱狂だと思い、中立になった。しかし、私はBitcoinが嫌い。そういう動きが嫌い。Super6の6月、9月の動きも嫌い。Bitconはバブル領域に入っていると思う。人々は機関投資家が買っていて、Bitcoinを押し上げていると言っている。そうなんだろう。その一方、夏以降、ゴールドにニュートラルでもある。それらはもう織り込み済みだ。2017年以来ドルにネガティブだが、今はニュートラル。人々は私を逆張り(contrarian)と呼ぶが、私は逆張りではない。しかし、人々がボートの一方に集まった時、そのボートがうまく進むとは思わないだけだ。Bitconはそうなっている。
ーマーク・キューバンは「暗号通貨はインターネットバブルのようだ。バブルが弾けたとき、Amazonや一部は残った。それ以外は消えた」とツイートしていた。
・マークとはしばらく会話していないな。もし歴史的な比較をしたいなら、その見方をサポートする証拠はたくさんある。注意しなければいけないのは、FEDと刺激策は執拗(relentless)である。FEDは何年もゼロ金利を続けることにコミット。経済刺激策に関しては、常にtrillionsという単語を聞いている。Sがついている。この巨大な推進力と戦うのは難しい。住宅金利はマイナス、社債は実質的にマイナス利回り。強力な推進力だ。債券市場では、イールドカーブがスティープ化。しばらくの間、トレンドはあなたの友達でいるだろう。
ー失業率が金利上昇に与える関係は?特にテクノロジーがジョブにプレッシャーを与えている。
・先ほども言ったとおり、FEDはすぐに利上げしない。心配する必要はない。今は不動産も上昇。ワクチンが銀の弾で、全てが正常に戻ると、よく聞く。しかし、ハンプティー・ダンプティーは元に戻らない。投資家は、我々が元に戻らないと考えて方が良い。小企業は今も休業状態だ。25%がクローズ。2021年に明らかになるテーマは、経済的機能不全(economic distress)が梯子を上る。何を言っているかというと、最初はバリスタなどの低賃金が影響を受ける。それが梯子を上る(賃金の高い職も影響を受ける)。企業経営者がビジネスのやり方を恒久的に再構築しなければならないと決断するために、どれくらいの期間が必要だろうか。ロックダウンはほぼ1年続こうとしている。南カリフォルニアでは、いつこれが終わるかさっぱり見えない。いつか、ビジネスのやり方を変えなければいけないという時点がくる。その変化とは「もっと人を雇おう」ではないはずだ。
ーとても暗い見方だ。しかし、鬱積した需要(pent-up demand)を感じるのではないか?人々は元に戻りたがっている。まったく同じに、ではないかも知れないが。だからと言って、世の終末がくるわけではない。
・短期的にはpent-up demandはあるだろう。その証拠もある。年末のホリデーシーズンでは、TSAのデータは伸びた。しかし、長期的に続く影響がある。人々は神を恐れ、貯蓄なく、職を失う恐怖を知った。究極的には、人々がもっと貯蓄する経済になるだろう。多くの刺激策で配ったカネが貯蓄に回っている。この深いリセッションの最も奇妙な反動は、個人の可処分所得が増えた事。刺激策のおかげ。これは永続的ではない。我々の未来はとても明るい。暗くはない。我々には再調整が必要だ。その再調整には、労力が必要だ。Forth turningの後には、今より良い世界が待っている。しかし、その世界を作るために、ハードワークをこなさなければならない。私はそれを楽しみにしているよ。
※1:
シカゴ連銀総裁、インフレ率2.5%を大幅に上回っても懸念せず - Bloomberg
“I’m not worried about inflation going up substantially beyond 2.5%. I don’t even fear 3%,” he said. “The more we get inflation up above 2% then markets are going to understand that, yes, we’re in it to win it.”
※2:
ガンドラックの基本ストーリーはインフレ。しかし、多くの人々が言っているように、日本化(デフレもしくは超低インフレの継続)の危険もある。なので、インフレにもデフレにも対応できるポートフォリオで運用しろ、と。
ドルで見ると、新興国株を買っとけ、という話になるのだが、円経済圏で暮らしている人は・・・。
彼がドルにニュートラルになったというのは、初めて聞いた気がする。この程度の円高で止まるなら、まだ米国株にしておこうと思いマス。
今のトレンドに乗れとも言っているし。$2000給付金が株価を押し上げるでしょう。