塾長の資産運用

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【ダニエル・タルーロ】AIの影響は低賃金層に留まらない

塾長です。

FED理事、現ハーバード・ロースクール教授、ダニエル・タルーロがBloomberg Markets and Financeに出演。

AI、自動化が米国雇用に及ぼす影響について、Columbia Universityグレン・フバード、The Economistザニー・ミルトン・ベドスと意見を交わしたヨ。

司会はお馴染みデイビッド・ウェスティン

初めに言っておくけど、解は無い。

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ダニエル:

・AI、自動化は公共政策において正当に分析も評価もされていない。

・3つの点を考慮すべき。

 影響が及ぶ人の数。数百万人。低賃金ジョブだけでなく、専門職にも影響がでる。米国を含む成熟国における中間層の空洞化促進。

 楽観的になったとしても、過去と同様にテクノロジーがジョブを消滅させる。移行がとてつもなく困難。移行が一時的であればOKと考えがち。移行が長期に渡り、劇的であれば、恒久的な傷を残す。人々は職を失い、経済全体に影響がでる。テクノロジーに恐怖感を持たないビル・ゲイツでさえ、変化のペースに懸念を表明。

 経済と政治の交点。イギリス、産業革命時に起きた囲い込み運動など。大量の解雇が起きた場合の社会的、経済的影響は、政治的な帰結を伴う。政治の極端化、不信感が増大する。米国でも一部既にみられる現象だ。経済危機より10年前から、製造業のジョブは20%減少した。そのジョブを失うペース、放逐されたという感覚が、今の政治の極端化と不信感を招いているとも言えるであろう。

 

グレン:

・AIは職を奪うだけではない。人々を助ける。壁を作るのではなく、橋をかけるべきでは。人々をAI時代に適用させるような政策が必要。しかし、我々の労働市場政策は1930年代のもの。

 

ザニー:

・驚くべきことの一つは、変化の遅さ。2013年に出たオックスフォードの研究で、20年のうちに47%の職が自動化に対して脆弱化と言われ、何度も引用されてきた。実際に起きているのは、裕福な国では失業率は非常に低く、そのジョブも一時的で酷いものではなく、継続的な本当のジョブである。ゆっくりしたペースで進んでいるのではないか。

 また、イノベーションはジョブを作る面もある。確かに、先進国で製造業からの転換に苦労している。100年前、米国は、産業革命と教育を同時にうまくやった。その時と同様、革命的な教育が必要なのではないか。

 

ダニエル:

・グレンとザニーに同意できないのは、事実というより、将来予測ではあるが、本当に大きな解雇、職の移動に対して、公共政策が追い付かないという点。貿易の影響でさえ、うまくこなせていない。そして、AI、自動化は、それより大きな影響が出る。

・個人の失業を超え、ある特定地域の集団、ある特定クラスの人々に影響が及ぶとき、個人を扱っている今のシステムは機能しない。

・これは大統領予備選でも話題になっている事でもある。アンドリュー・ヤンが解決策について少し語っている[ベーシック・インカム制度]が、優勢な候補者は誰も語っていない。その理由は、答えを持っていないからだろう。

・貿易による失業の解決方法の一つは、グローバリゼーションに制限をかけること。では、AIの進化にどうやって対応するのか?工場が閉鎖されるのではなく、現行のビジネスの中で職が失われていくのに。

 

グレン

・オースティン・グールスビー、ペニー・プリツカーと私で提言しているのは、コミュニティーカレッジへの包括補助金。労働者へのトレーニング。以前は疑っていたが、今は若干その感覚が薄れているのは、特定地域の所得救済。これをやらなければ、社会的機構が壊れてしまう。

 

ザニー

・以前の見方では、人々は職を求めて移動するはずだった。我々は、特定地域が叩き潰された時に、徐々に地域が蝕まれていくと予見できなかった。その意味で、英国はとてつもない実験をしている。

 テクノロジーの進化、採用を止めてしまうことはできないだろうか。

 

ダニエル

・それがまさに政治が関わらなければいけない問題。変化の元とペースを遅くするのか、自動的に修正されることを期待すのか。少なくとも米国では、自動的な修正メカニズムはうまく働かなかった。

・もし今のシステムで何が参考になるか、応用になるかを考えると、障害保険くらいだ。傷害保険は、55歳で失業した人のためには設計されていないが、それくらいしか無いんだ。

 深夜のテレビ番組で、障害保険請求をしますよ、と宣伝しているのは、そのせいだ。

・スキルのミスマッチ、地位的なミスマッチがあると同時に、ジョブ生成のミスマッチもある。新しいジョブができる前に、古いジョブが失われてしまう。

 

グレン:

・大統候補者選挙でどちらの側も取り上げていないのは皮肉である。有権者はトランプの主張に不安を感じている。左翼は皆保険を主張するが、何の助けにもならない。

 

 

グレンの最後の主張は間違っている。トランプの政策は、グローバリゼーションで失われた職を取り戻そう(せめて、これ以上無くさないようにしよう)としているのだ。すなわちトランプに反対する民主党候補は助けにならないどころか、グローバリゼーションの促進→職の喪失(もしくは、その加速)をもたらすのだ。

 

結局、人は変われない。工場労働者がクビになっても介護職には行かない。津波で家が流されても、台風で家が壊れても、同じところに住もうとする。

その人達が悪いとはまったく思わないヨ。人間の本質だから。残念なだけ。

それにしても、ダニエルの答えはdepressingだネ。AI、自動化で失われたジョブについていた中高年は、障害保険、すなわち、社会保障で養うしか無い、と。