塾長です。
昨日のblogにてジェレミー・シーゲル教授の利上げ見通しを紹介したので、こちら本物のFEDアナリスト(?)デイビッド・ザボス(David Zervos)のインタビューを紹介しておきます(12/23付け、CNBC):
ーこれだけ物価上昇圧力がある中で、経済は好調を維持できるだろうか?何か混乱しているのだろうか?
・混乱するのに十分なデータがそろっている。インフレは理解するのが難しいほど。Q2は70年代のインフレと同レベル。Q3はマシになった、平常に戻ったと思えたが、最新のPCE、CPIは恐れるレベルに戻ってしまった。
私はまだ自分の考えに従う。大部分のインフレはサプライチェーンの問題。それは続くだろう。需要側は、予想が難しい。パンデミック前に比べて、まだ4~500万人のジョブが少ない。私は注意深く見守り、このインフレがさらに長期間継続するものなのか、学びたい。それは、前回会見でパウエル議長が言っていた事でもある。小さな(インフレ)リスクがある、注意深く見守るべきだ、と。それが来年の市場にとって重要だ。インフレがFEDの行動に手錠をかけるのか。この10年間、見られなかったものだ。
ーあなたが言うように、このインフレの原因が供給側からくるものだとして、あなたはインフレを一時的(transitory)だと呼ぶつもりか?
・transitoryか、persistentか?の議論は去年たいへん盛り上がりを見せた。私は、インフレ率は間違いなく下がると思う。問題は、いつか?だ。FEDは来年から再来年にかけて、ディスインフレ的な予想している。問題は、タイミング。つらいのは[2022年]Q1だ。1月、2月のコアCPIが[今より]大きく下落したとしても、前年同月比でみればフラットなのだ※1。[2022年Q1における]コアCPI、コアPCEともに、年率でみれば悪く見える。何があろうとも、だ。[2022年]Q2になれば、年率換算でのCPI、PCEはビックリするような値から下落するだろう。ただ、世間受けの悪い数字なのだ。それがパウエル議長の行動の元となった。皆が「おい、インフレ率が6.8%になっているのに、何もしないつもりか?」というものだから、パウエルは反応したのだ。うまくタカ派に転換した。少しだけパーティーからパンチボールを引き上げた。市場を混乱させない程度に。10年債は1.5%、S&P500は最高値。市場は長期のインフレに対する見方を変えていない。これからの5年間にわたる平均インフレ率予想(5 year, 5 year breakeven)※2は、年初の値とほぼ同じ。FEDはうまく立ち回っている。しかし、用心深くなくてはならない。もし混乱が起これば、ナイスでフレンドリーでいられなくなる。我々の顧客向けにレポートを書いたところなのだが、地政学だろうがウィルスだろうが何らかの要因によってリスクオフになった時に見られるput structureが、今は見られない。それが2022年をトリッキーにさせる。
まとめると、こんなことを言ってるのかな?:
- FEDはインフレが一時的であるという見方を変えていない。
- 市場も、それに同意している。
- 2021Q1のインフレ率が低かったので、2022Q1(特に1月、2月)は高く見える。世間から?政治から?のプレッシャーにより、FEDは利上げせざるを得ないかも知れない。
- 今のところ市場は2022年初頭の暴落を予想していない。
#3について補足するとすれば(ジム・ビアンコらが言っている事ですが)、市場は2022年利上げ3回を織り込んでいる、という点でしょうか。
※1:下のチャートにあるように、今年2021年、1月、2月のCPI上昇率は2%以下。なので、2022年1月、2月の値が今より多少下がったとしても、前年同月比でみれば悪く見える(高インフレが進んでいるように見える)。
※2:
5-Year, 5-Year Forward Inflation Expectation Rate (T5YIFR) | FRED | St. Louis Fed