塾長です。
先日、バイデン就任1周年演説をお伝えしましたが※1、どうやら演説後のQ&Aで、ロシアーウクライナの話が出て、微妙なやりとりがあった様子。
既に報道に乗ってしまって、タイミングを逃した感はありますが、ここに書き留めておこうと思いマス(自分の都合、趣味で)。
これが、演説とQ&A全編動画。
ロシア・ウクライナに関する重要な3つのQ&Aを抜き出し:
<27:37~>[ジャン・エプスタイン、Bloomberg]あなたの外交アドバイザーはロシアがウクライナを攻撃すると警告してきた。しかし、欧州の友好国は、ロシアへの制裁措置に合意できていない。もし米国とNATOが軍隊を送らず、友好国が制裁措置に同意できないのであれば、米国と西側諸国はプーチンに対するレベレッジを失ったことにならないか?過去に行われた制裁が効いていなかった事を考慮すると、新しい制裁がプーチンを止められるだろうか?
・まず、これまでに目にしなかった程大きい制裁を行うからだ。次に、私とプーチンは気さくな議論をしてきた。NATOが団結しないという考えには、私は同意しない。主要なNATOのリーダーたちと会話してきた。NATO Russian Summitを開催したりした。
私が思うに、これからあなたが目にするのは、ロシアが侵攻すれば、結果責任を負うのだ(I think here is what you are going to see is that Russia will be held accountable if it invades・・・)、何をするかによる。それが小さな襲撃(minor incursion)であれば、ちょっとした一戦を交えるかどうかと言ったところだ。もし彼らが国境に集結した軍隊を使って、実際に可能な事をやった場合、ロシアにとって大災害となる。もしウクライナに侵攻した場合だ。我々の友好国、パートナーは、ロシアとロシア経済に対して大きな代償と重大な損害を与える。我々は、NATOの友好国を要塞化する。既に$600Mの武器をウクライナに送った。ロシアが支払う人的コストは、彼らは最終的にそれに打ち勝つだろうが、とても大きいものになる。リアルなものだ。重要なものだ。それに加えて、プーチンは厳しい選択を迫られる、外交的な緊張を下げるが、結果に直面するかのどちらかだ。皆、ロシアは欧州に対するエネルギー供給を制御できると言っているが、考えて欲しい、彼らがそこから得られるカネは、ロシア経済の45%を占める。これは一方通行ではない。ロシアがエネルギー供給を断てば、私の母がよく言っていたように、意地悪をすれば自分が損をする(biting off your nose to spite your face)。彼らが全ての素晴らしい選択肢を持っているわけではない。私はフィンランドの首相と会話した。ロシアがやっている事に対して、フィンランド、スウェーデンの不安についてだ。ロシアはフィンランドの状況を変えたくないだろう。フィンランドがそうするとは言っていないよ※。ロシアが何をしようとしているのか、いかに悪意のある行いなのか、という事だ。彼らは経済的に重大な結果を受ける。例えば、侵攻すれば、ドルのデノミだ(dollar denominations)。彼らの銀行はドルを扱えなくなる。多くの事が起こる。
私とプーチンの会話は、何と言えばいいだろう、我々がお互い理解できな事はない。私は彼を理解しているし、彼は私を理解している。私は言ってやった。ロシアは過去に他の国を占領しただろう、その時の代償は非常に大きかったよね、と。侵攻することはできるだろうが、時間が経つにつれ経済的損失は大きくなる。何年やるつもりか。1年?3年?5年?10年?どれくらい費用がかさむのか。これはロシアにとって楽勝(cakewalk)ではない。軍事的にはウクライナに対して断然優位に立っている。しかし、ロシアは法外な代償を、直後に、中期的に、長期的に支払うことになる。
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<53:03~>[アレックス・アルフォード、Reuters]Bloombergの質問の続きですが、ロシアが侵攻した場合、結果責任を負う。それが何かによる、小さな襲撃であれば、何をするか議論することになるだろう、と言った。これは、ロシアがウクライナ領に小さな襲撃をしても、脅しに使っている制裁措置を発動しないという意味ですか?プーチンに小さな襲撃の許可を与えたのですか?
・良い質問だ。そう聞こえたとしたら、そうではない。最も重要な事は、大国はブラフが出来ない。NATOを分裂させる考え。それがプーチンの目的の一つだと思うのだが、は大きな間違いだ。もし重大な軍事行動でない場合、例えば、サイバー攻撃を続けるようであれば、我々はサイバーで同じ対抗措置を取る。ウクライナ国内にFSB(ロシア連邦保安庁)が活動している。NATOを一枚岩にしておくのが、最も重要だ。私はそのために時間を使ってきた。何が起きた時に、どの国が何をするか、NATO内の考えに違いはある。明らかにしておきたいのは、ドルに関する重大な制裁措置を取った場合、米国にもネガティブな影響があるし、欧州にもある。ロシアへの影響は甚大だ。だから、NATO各国が同じ考えをするようにしたいのだ。もし、ロシア軍が国境を越え、ウクライナ人を殺すようなことがあれば、それが全てを変えるだろう。しかし、プーチンがどの程度何をするかによって、NATOとしての我々の対応は変わってくる。
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<56:13~>[クリスティン、NBC]国内問題で色々聞きたいことがあるのだが、ロシアについて。先ほどの話を聞く限り、あなた方はプーチンがウクライナ侵攻をするのだと結論付けたようだが、そういうことか?
・私が唯一確信しているのは、それがプーチンだけができる決断だという事。彼以外その決断はできないし、他の人は影響を及ぼせない。彼はその決断をしようとしている。彼がベッドのどちらの側で起きるのかによるのだろう。もし彼が戦略的ドクトリンの扱い、欧州の武力体制の扱いについて協議したいというのであれば、それは不合理とは言えない。しかし、私には彼がそうしたいと決めたかどうか分からない。今までのところ、3回の会談を行い、何の結果も出ていない。国務長官、安全保障アドバイザー、その他の上級高官から受けている印象として、会談に出ている相手方は、プーチンが何をするのか分かっていない。様々なクライテリアがある。例えば、彼がウクライナに侵攻し、全土を支配した場合、特に北部からベラルーシにかけて、彼は土地を渡るため、凍るまで待つ必要がある。彼が話し合いをする方向に向かうのであれば、我々は防衛力を継続的にウクライナに供給し、バルチックと黒海で何が起こっているのか話し合う。プーチンは様々なことを計算し、何がしたいか、できるかを考えている。彼は情報を持った個人であり、私は、彼が直近、中期、長期の結果を計算していると信じる。彼はまだ決断を下していないと思う。
ここに二つ批判があって、リアルタイムでBloombergとNBCに突っ込まれている。
1つは「I think here is what you are going to see that Russia will be held accountable if it invades」の部分で、ロシア侵攻があるとほぼ言い切っている。外交的努力をしている最中に、こんな言い方はよろしくない。I think here is what you are going to seeは余計だし、「if it should invade」と言うべきだったのではないか。
NBCへの回答は「プーチンが決める事だから俺は知らない」と聞こえる。
もう一つは、minor incursionであれば、事を荒立てないかも、と言っている部分。これは、ウクライナ大統領の抗議に発展してしまった※。
ロイターへの回答を聞く限り、NATOの中に、ロシア制裁に後ろ向きな国があるのでしょう。どこでしょうね???トルコ辺りがすぐに思い浮かびますが。NATOが一枚岩でないのだから、なるほど、プーチンも強気に出るわけだ。
「ロシア/プーチンも馬鹿じゃないんだから、戦争なんて起きないよ」と思っていましたが、世界最大の軍事力を誇る米国のトップ、大統領のこの言いまわしを聞いていると不安になってきた・・・。利上げ、QTどころの騒ぎではない。戦争→好景気→株高、という類推もありますが、核戦争となれば話は別。
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フィンランド、NATO加盟計画せず 対ロ制裁なら協調へ | ロイター
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