塾長です。
今朝のblog記事で、ジェフリー・ガンドラックの動画が上がったと短報としてお伝えしましたが、時間が取れたので、その中身を書き出しておきます。
記事タイトルを「詳報」としましたが、全編1時間15分もある動画なので、要約です。
≪動画開始からの時間≫ 説明資料のタイトル
ガンドラックによる説明の要約
という形式にしてあるので、興味のある部分に直接行って見るような使い方もアリです。
≪2:33≫I feel young again
2021年を通してのCPIはヘッドライン7%、コア5%に着地しそうだ。
今日のプレゼンテーションのタイトルを”I Feel Young Again”としたのは、俺が小学校3年生の時と現在が、地政学的に、インフレ的に似ているからだ。
≪6:36≫ S&P500 and Valuation
1998年から2018年にかけて、S&P500は(ほぼ)値下がりせず上昇。パンデミック後には、ほぼ垂直に株価が上昇した。
≪7:31≫ Post-Covid Goods Spending Comparable to Post-GFC Cumulative Growth
消費財消費(Goods Spending)は、ほぼS&P500と同じような動きが見て取れる。
≪8:10≫ Fed Balance Sheet and 3-Month Change
そして上記二つのチャートは、FEDのバランスシートとほぼ同じ形になっている(青線)。FEDのQTが株高と消費財消費を支えている。2022年は、FEDの下支えが無くなるのであるから、リスク資産にとって、究極的には経済にとっては逆風だ。
≪10:17≫ Cross Asset 2021 Performance
2021年、株は軒並み好調なリターン。マイナスは日経と新興国株。日本は先進国なのに、奇妙だ。
債権はマイナスのリターンが多い。プラスだったのはTIPS、銀行ローンなど。
為替は、ドルが強かった。俺は長期にはドルにネガティブ。円安が進んだ。それが日経の足を引っ張った面もある。
≪13:21≫ Credit 2021 Performance
クレジット市場の詳細。high qualityが悪くて、cccが良かった。CMBC、消費者ローンが良かったのは、政府のサポートのおかげ。
≪14:12≫ Markets Since 1994
S&P500、Bloomberg Barclays US Aggregate Bond Index(様々な債権を総合した指数)、Bloomberg Commodity Indexの長期比較(要するに、株、債券、コモディティーの値動き比較)。
S&P500は1994年を100として、1720。17倍だ。債券は4倍。コモディティーは2倍。
これらは、2010年までは同じくらいのリターンだったが、2011年から分離し始めた。全ては金融政策のせいだ。QE、日本や欧州のマイナス金利。
≪16:02≫ U.S. Household Income and Covernment Treansfers
可処分所得、政府移転支出(注:生活保護や政府年金など)を除いた収入を並べたチャート。2014年から2020年まで、その二つは平行線。その後、パンデミックで大きく乱れたが、トレンドラインに戻りそうだ。
≪18:07≫ Consumer Sentiment
ミシガン大学消費者態度指数。非常い弱い。過去のリセッション時に近いレベルだ。今は、パンデミック直後に急激に落ちた底を、さらに下回っている。
≪19:38≫ Universit of Michigan Sentiment - Autos
どの部分がそれほど悪いのかというと、自動車。「今が自動車を買うのに、良い時期だと思いますか?」と聞いた時の答え。統計開始以来悪い値。
≪2010≫ Used Car Prices (YoY%)
マンハイム中古車価格。年率、46%上昇した。
数年前にリースを開始した車が、リース明けに買い取れる。大儲けしているらしい。
中古車価格中央値が30,000ドルだと先週聞いた。
≪21:16≫ University of Michigan Sentiment - House
「今が家を買うのに良い時期か?」への返答。大きな落ち込み。統計や、地域によって違うが、ある場所では25%上昇。
非常に低い住宅ローン金利があり、物価が上昇しているので、住宅価格は上昇しているが、アフォーダビリティ(affordability)は2004年と同程度。
今後の金利の動きに注目だ。
≪23:26≫ Existing Home Sales Median Price (YoY) Change
中古住宅販売価格中央値の変化。24%上昇でピークを打ったが、今だに14%上昇している。
≪24:07≫ Existing Home Sales Months Supply (in # months)
中古住宅の供給。今の調子で販売が続いた場合、何か月分の在庫があるかを示したもの。今は2か月程度と非常に低い。金利が制御不能にならないかぎり、住宅価格は高止まりするだろう。
≪25:10≫ Atlanta Fed Wage Growth vs. 30-Year Mortgage Rates
賃金上昇と30年固定住宅金利の比較。通常は賃金上昇率よりも高い住宅金利を支払らわなければいけない。 2%程度の差があるのが普通。パンデミック後、それが逆転した。住宅のaffordabilityを支えている要因である。
≪25:55≫ Inflation
Bloomberg Businessweekの表紙。2019年4月「インフレは死んだのか?」、2021年11月「インフレが戻ってきた」とある。
インフレが継続するというのが大方の見方。ローゼンバーグのように、下がるという人もいる。
≪26:54≫ Container Ships Waiting off LA/LB Ports
ロサンゼルス、ロングビーチで停泊しているコンテナ船の数。サプライチェーン混乱の原因と言われている。少し古いデータかも。
≪27:47≫ Shipping Container Freight Rates: Los Angeles <-> Shanghai
コンテナ船の料金。下がっていない。
≪28:17≫ Export and Import Prices (YoY)
輸入品の価格は年率12%、輸出品価格は18%上昇した。輸出品は関係ないと言う人もいるが、輸出するモノは国内消費もされるのだから、重要だろう。
≪29:49≫ U.S. CPI & ISM Manufacturing Prices Paid (4-Month Lead)
CPIと製造業の仕入れ値。デイビッド・ローゼンバーグなどの物価が落ち着くと言っている人たちにとっては、最も拠り所となるチャートであろう。
≪30:39≫ NFIB Jobs Hard to Fill and Worker Compensation Plans
NFIBが統計を取っている空きが埋められない求職(青)と、賃金(赤)の関係。改善が見られない。
≪31:35≫ Time for Greener Pastures?
Gallupが出している「今が良い仕事を見つけるのに良い時期だと思いますか?」にYesと回答した割合。過去20年で最も高い割合(70%以上)を記録。
数月前になるが、他のサーベイで「キャリアの変更を考えていますか?」と聞いていた。58%がYesと回答していた。ニュース番組では、教師や医療関係者がキャリアを変えたいと言っているのを目にする。
≪32:44≫ Atlanta Fed Wage Growth Tracker By Age
年代別の賃金変化。数か月前(several months ago)のwebcastでは、若年層のみが上昇していると言った。それが最も高い率であるのは変わりないが、他の層に広がりだした兆候がある。
俺は、2022年、賃金上昇が他の人が思っているよりも高く上昇するとおもう。
≪34:34≫ Citi Global Inflation Surprise Index with Constituents
Citiが出している、予想されていたインフレ率と、実際のインフレ率の差を示す指数。地域ごと。
過去、どこかの地域では必ずマイナス(インフレ率が予想を下回る)が見られたが、2021年後半は全地域がプラスとなってしまった。その合計は、チャートが作り始められた2010年から、最高を記録。
これがジェローム・パウエルがタカ派になっている理由。リスク資産がどのような影響を受けるか見ものだ。この映画はかつて見たことがあり、結末は悪かった。
≪35:58≫ U.S. Breakevens
米国国債とTIPSを比較したときの損益分岐点。30年債はほとんど上昇していない(黒)、2021年1Qとほぼ同じ。2021年、全てのエコノミストがインフレを予想していたにも関わらず。
5年債も上昇したが、ピークをつけて反転。
このチャートから分かるのは、債券市場は高インフレが来ないと言っている。
≪36:53≫
≪37:29≫ Dollar Spot Index (DXY)
ドル・スポット指数。
今はドルにニュートラル。2年といった長期では、ドルに弱気だ。
200日移動平均(赤)を割った時、さらに落ちていく可能性があるだろう。まだ、そこには距離がある。
≪38:40≫ U.S. Dollar and Twin Deficits
ドルは財政と貿易赤字に関連する。
財政赤字は減少してきている。何が起きるか予測しているのではない、まだ数字を追っている段階だ。
≪39:40≫ 2s10s and DXY (inverted)
10年と2年債の金利差(黒)と、反転させたドル(赤)を並べたチャート。赤線が下がっているとき、ドル指数が上昇しているという事。
イールドカーブがフラット化しており、景気の先行きが良くない事を示している。
≪41:48≫ Inverse U.S. Dollar vs. Commodities
反転させたドル指数とコモディティ価格。ドルが高くなると、コモディティが下落する。
≪42:46≫ Gold Long Term
長期のゴールド価格。値動きが収斂してきている。上か下かにブレークするだろう。
俺は長期にはゴールド強気。ドルに弱気だから。
≪43:38≫ Real Fed Funds Rate
FFレートからCPIを引いた、実際のFFレート。マイナス6.7%の金利。借り手にとっては、スゴイ刺激策だ。
≪44:19≫ Real Fed Funds Shadow Rate
QEをやらなかったとして、同様の効果をFFレートで実現しようとしたとき、必要になるFFレート。刺激策がー2%の効果があるので、FFレートは-8.6%になる計算。
≪45:53≫ Fed Funds Rate &Wage Growth
FFレートと賃金上昇を並べたチャート。FFレートが賃金上昇を追いかけてきたように見える。今、賃金が急上昇しているので、これからが見ものだ。
≪46:56≫ Fed Funds Rate vs. U.S. Dollar
FFレートとドルインデックス。これらも同じような軌道を描いているが、ここ数年はドルが上がっていてもFFレートは変わっていない。FEDが出遅れている証拠。
≪47:20≫ U.S. Treasury 2s10s Yield Spred
10年債(青)と2年債(赤)金利。10年はあまり動かず、2年だけ上昇。景気減速を示す弱い兆候。長期債が下がり、短期が上昇すれば、強い兆候となる。まだ起きていない。
≪48:10≫ 2s10s Yield Curve
2年と10年債の金利差。周期がある。
≪49:10≫ Copper/Gold Ratio vs. UST 10-year Yield
銅/ゴールド価格比(青)と、10年債利回り(赤)。強い相関があるのだが、パンデミック後に大きく関係が崩れてしまった。10年債が抑えられているのは、外国人の買いのせいかも知れない。欧州、日本から買うと、為替ヘッジを入れても、プラスのリターンになるから。
銅/ゴールドは、10年債が3%近くにあるべきだと言っている。
≪50:59≫ U.S. Treasury 5s30s Yield Spread
5年と30年債金利差。30年債はほとんど上昇していないが、5年債は上がっている。典型的なリセッションに向かうシグナルだ。
≪52:13≫ U.S. Rates: 12-Month and 2-Year UST Yield
≪53:18≫ Replace FOMC with 2-year UST
≪55:08≫ Long-Term Real Returns on S&P500
インフレ率を考慮して、S&P500の”実”リターンを算出したチャート。
振れ幅が大きい。周期がある。プラス10%の時もあれば、マイナスの時もある。ブームとその破裂の繰り返し。今はブームにあるように見える。
≪56:32≫ Nasdaq 100 Relative to S&P 500
Nasdaq100とS&P500のパフォーマンス比較(比率)。ドットコム時代と同じレベルに到達した。ドットコム時代に記録した最高値(赤)を割れば、大きく下がる可能性がある(Nasdaq100のパフォーマンスが、S&Pを大きく下回るようになる)。
≪57:33≫ Market Breadth
Nasdaq Composit(赤)と、構成銘柄のうち200日移動平均以上にある銘柄数の率。ワニの口の形になっていて、弱気サインだ。
≪58:37≫ Growth vs. Value Relative Price and Earnings Per Share (EPS)
成長株と割安株の比率を、株価と一株あたり利益でみたもの。
こちらもワニの口になっている。割安株に有利な形。我々が欧州株を好んでいる理由でもある。
≪1:00:14≫ Value vs. Growth Relative Returns
このチャートを見ても、割安株が買い時であるのが分かる。
≪1:00:37≫ Equity is Expensitve, but Cheaper than Bonds
株は多くのメトリックから見て割高だが、債券と比べたら割安だ。
≪1:01:36≫ U.S. Equity Prices vs. Rest of World
米国株価格と米国以外の株価格の比率をチャートにしたもの。2010年頃から米国株が相対的に値を上げ続けてきた。約3倍になった。これが、我々が欧州株を買う別の理由。
≪1:02:33≫ Rest of the World is Significantly Cheaper than U.S.
S&P500を米国以外株価指数割ったもの(赤)と、米国以外株のP/EからS&P500を減じたもの(青)のチャート。
≪1:03:12≫ S&P500/MSCI Europe
S&P500と欧州株指数は2020年半ばからほとんど変わっていない。このチャートから、(S&P500が欧州株を上まわってきた)モーメンタムは息切れしているように見える。
≪1:03:45≫ S&P500/ MSCI Europe Relative P/E Ratio
S&P500と欧州株のP/E倍率比較。
≪1:04:11≫ MSCI Emerging Markets
金融危機前の最高値を2020年にようやく更新。2022年が強い年になるというシグナルは送っていない。
≪1:05:00≫ S&P500/ Emerging Markets
S&P500のパフォーマンスを新興国株のそれで割ったもの。ここで指摘したいのは、周期性。ボトムをつけて上昇。1998年にピーク。
≪1:05:59≫ S&P500 vs. MSCI EM Normalized to 1/26/18
これもワニの口になっていて、S&P500にとって強気になれない。
≪1:06:49≫ S&P 500/MSCI Emerging Markets Relative P/E Ratio
欧州株との比較でも見た通り、S&P500と新興国株とのP/E Ratio比較。ピークアウトしているように見える。
≪1:07:14≫ Emerging Markets/ MSCI World vs. Industrial Metals
新興国株は工業用途金属を同じ動きをする傾向にあるが、それが崩れている。ここから金属が下がるのか、新興国株が上がるのか。この2つのペアトレードが理にかなっているだろう。
≪1:07:57≫ J.P. Morgan Emerging Market Currency Index
新興国通貨インデックスが2020年の底値に触っている。ここから上昇すれば、新興国株も上がるかシグナルになるかも知れない。我々は新興国株には投資していない。新興国株が長期的な視点から、素晴らしい取引になるかも知れないが、私にはまだそれが予想できない。
≪1:08:45≫ Global Bank Stocks
日本、欧州、米国の銀行株インデックスを比較。ピンク(紫?)がTOPIX Bank Indexで、このチャートからは外れているが、1994年まで非常に強かった。世界のリーダーだった。その後、米国のKBW(青)と欧州(オレンジ)が強くなり、日本はヨコ。
興味深いのは、2008年まで米国と欧州が同じくらい、すこし違ったパターンで上昇した。その間、日本は下がり続けた。なぜか?マイナス金利のせいだ。
そして金融危機が起きた。欧州も米国も同時に大きく下げた。日本も下がり続けた。2009年米国と欧州がボトムを打った。
そのあとが興味深い。2011年、欧州、米国ともに株価修正。そして欧州は下がり続け、米国は上昇した。米国は今、金融危機前に付けた最高値を更新したが、欧州は大きく下がったままだ。なぜか?欧州金利がマイナスだからだ。
日本は、このグラフの開始からー83%だ。欧州は1990年代から変わっていない。米国は大きく上がった。
俺は、米国がマイナス金利にならないことを願うよ。FEDは今のところマイナス金利にしないと言っているが、どうなるだろう。毎回規模が大きくなっている。次のリセッションでは、FFレートをどうするか、チャレンジを受ける。俺は、次に世界経済が下落したら、このKBWの強気相場は終わると思う。
注釈を付けたり、気になる部分を抜き出して自分なりのコメントを書こうと思っていましたが、力尽きたので今日はここまで・・・。