塾長です。
昨日(米国6/26)は大きなニュースや重要指標の発表なく、米株は微上昇。米債利回りは上がり、円安。160円/ドル突破。
S&P500、5,477(+0.16%)
Nasdaq、17,805(+0.49%)
【米国市況】円が対ドル160円80銭台、38年ぶり安値-国債売りの一因に - Bloomberg
S&P500種株価指数は小幅続伸。ボラティリティーの再燃に見舞われたエヌビディアは、引け際数分前にプラス圏に浮上した。同社株は荒い値動きが続いており、おおむね相場全般の方向性を左右している。
原油、80.88
10年債、4.3160
ドル円、160.7460
Bitcoin、60,987
5月 住宅着工件数、127.7万件(予想138.0万件)
同[前月比]、-5.5%(1.2%)
5月 住宅建築許可件数、138.6万件(146.5万件)
同[前月比]、-3.8%(1.4%)
6月 フィラデルフィア連銀景況指数、1.3(4.5)
■Micron決算;
マイクロン株下落、業績見通しが一部投資家の高い期待に届かず - Bloomberg
時間外-5.78%。
■〆は、昨日見逃していたマイク・ウィルソンのインタビュー@Bloomberg(放送は一昨日)。少し長めですがお付き合いください;
ーあなたは以前からAIへの熱狂(enthusiasm)によって全ての株が上がるわけではないと主張してきた。nVidia株のボラが高いのですが、そこから何を学べますか?値上がり株が広がるのか、市場全体が弱まるのか?
・市場はいつも通りスマートである。コンセンサスにはなっていないが、我々の主要な想定(main narrative)であるところの、この政策ミックスが通常と異なり、財政が強くFEDに金利を高く保つプレッシャーになっている。イールドカーブが反転しているので、金利が高過ぎることが分かる。それが多くの経済と株の空洞化、クラウドアウトを招いている。市場はどのように反応するかというと、この難しい状況で良いパフォーマンスを出している救命艇に引き寄せられる。今の状況は消費者と企業の両方にとって困難だ。それはデータに表れている。ちなみにMagnificent7についてだけ言っているのではない。質の高い成長株のことだ。テックと通信セクター以外にもそれらは存在し、株は上昇している。まるでピストンが動いているようだ。VIXはとても低い、S&P500のボラは低いが、水面下でのボラはとても巨大だ。ボート自体は安定しているが、その上で人々がボートの一方からもう一方へ動き回っているようなもの。これはある種のショックが来るまで続くだろう。それは選挙かも知れない。選挙の結果に心配しているのではない。より広い平均に影響する。選挙は結果を伴う。それは世界中で起きている。米国の選挙が例外である理由は無い。私が言う結果とは、経済政策はもちろんだが、市場のボラの事である。
ー選挙については別で伺いたいのだが、あなたの言うショックとは・・・、あなたは直近のリサーチで潜在的な3つのショックをあげた。一つはインフレの上昇。これは多くの人が起きると思っていないし、あなたもその一人だ。次に、ある種の流動性ショック。例えば国債入札の不調とか、何か市場機能の問題。最後に、最もありそうな事として、あなたが先ほど言っていた高品質な成長株の急落。それに近づいている事をどのように知れますか?もしくは、いつになれば株の急落というアイディアを諦めますか?
・市場はその方向に傾いている。市場は成長が失望に終わるだろうと言っている。ちなみに、今年に入ってから、成長は失望だった。ほとんどの経済サプライズは下方向のものだった。それは続くだろう。それゆえ、[株の]上昇するケースが、よりあり得そうでないのだ。市場はどのように[弱い経済データに]対応したかというと、巨大株、高品質成長株に向かった。いくらかは防衛的になった。それは経済サイクル後半において典型的に見られる動きである。なぜ我々がこの話を持ち出しているかというと・・・、市場はソフトランディングを織り込んでいる。それがある種のベースケースであり、コンセンサスだ。それ自体は良い事だ。問題なのは、ソフトランディングになったとして、上値はどこにあるのか?株を選ぶしかない。それを市場はやっている。それが背景である。それでは、何が状況を"growth scare"やリセッションへの恐れに転嫁させるだろうか?労働市場だ。FEDも労働市場に注目しちている。もし労働市場が壊れたら、Non Farm Payrollが100,000を下回ったら、失業率が4.4%、4.4%となれば、FEDは金利を下げると考えるべきだ。市場はそれを歓迎する。FEDが1.25% points利下げするまではね。そうなれば市場は10%下落する。
ー通常はFEDが利下げすれば、株のサポートになると考えますが、利下げ幅が大きければそうならないと言うのですね。
一歩引いて、nVidiaと市場について聞きたい。nVidiaはバリュエーションが高まっている。nVidiaを除けば、あなたにとって市場は正常ですか?
・先ほど言ったように、市場は完全に理にかなっている。品質の良い株、成長株に向っている。経済の特異点だ。もしかしたらディフェンシブな物件にも。
疑問は、それらの株のマルチプルは高すぎるのか?だ。もしソフトランディングが完全な形で成し遂げられるなら、そうだと言えるだろう。もし軌道を外れれば、問題となる。我々がそれについて今週書いたのが、3つのリスクである。インフレ再燃、財政の持続不能性によるterm premiumの上昇、成長鈍化だ。こんにちにおいて、確率的には3番目が最も高いだろう。それは変わるかも知れない。これは過去1.5年からの学びでもある。過去18か月で何度物語(narrative)を変更しただろう?ハードランディングからソフトランディング、ノーランディングへ。まるで椅子取りゲームのようだ。今はソフトランディングだと言われている。それで良いだろう。何も起きなければね。マクロ投資家としては、それらのリスクを理解しなければいけない。
ーそれは皮肉的でもあります。あなたが指摘したように、水面下では株に大きな動きがある。ボートの片側から別の側に動いているとも言った。それはインデックスと個別株の関係が壊れたと言う事だろう。セクター内でも同じで、関係性が壊れている。それは問題だろうか?セクターで見るのではなく、個別株で見なければいけなくなった?
・あなたが言った後者の人達には問題だ。すなわち、セクターで取引はできない。我々は「どこのセクターが割安か?」でキャリアを作ってきた。それは機能していない。機能しているのは、”factor trading”である。私が言ったことに戻るが、品質の良い、防衛的、小型株に対して巨大時価総額株、という戦略がとてもうまく機能している。Operational Efficiencyといったfactorが機能している。それは[どのセクターに属しているか?といったものではなく]個別企業が持つ特異な要素である。
ちなみに、one month rolling basisで見ると、市場のbreadthは1965年以来最低だ。それは私よりも年上である。とても長い期間だ。それが世界の終わりである必要性はない。値上がり株が狭まり、広がるという例はある。しかし、それにはなんらかのregime shiftが必要である。別の言い方をすると、ソフトランディングの物語にいるあいだは何も変わらない。もし高成長、高インフレに向えば、間違いなくシフトになる。より景気敏感株に向かうだろう。growth scareかリセッションへの恐れが高まれば、防衛的な株に向かう。我々はどの可能性にもオープンだ。それが我々の仕事である。準備をしておかなければならない。
ーもしインフレ再燃となれば、それはどこから来るだろう?
・コモディティーの値上がり。中国が経済刺激策を売って、コモディティーが上がる。住宅市場、OERからではないだろう。それらは下方向に向っている。サービス価格の上昇かも。保険市場で見られたようなものだ。2021年に見られたような大きな波ではない。2021年に財政がバスを駆動したような推進力は見られない。成長と広範囲のインフレには外部からのショックが必要だ。それゆえ、我々はこれをリストの3番目に置いた。
ー流動性についてはどうでしょう?あなたが2番目にあげている、国債入札が不調で、金利が上がるような。救命艇に向かうでしょうが、その数は減っている。
・今年に入って、救命艇が一艘ずつ沈んでいる。少なくとも水を被っている。究極的に、全ての人がその一艘に向えば、船は混み過ぎて沈み、別の船に乗り移る。これは経済サイクルの終盤では理にかなっている。それゆえ、我々は我々に見方を変えていないのだ。我々はサイクルの中盤だと思わないし、初期の拡張期ではないと思っている。これはサイクル的な行動である。2018年、もししくは2016ー17年に見られたものと同じである。これは典型的に見られるし、そうなると思う。再度になるが、重要なので言っておくと、[優良なのは]テック株だけではない。Nifty50のようなもの。
ーあなたはそれらの株を買いますか?それとも集中しすぎているので避けますか?
・今、我々は他の市場と参加者と同じ[で買っている]。モーメンタムが支配する市場だからだ、我々が他と違うのは、これが安定的だと思っていない点である。あなたの先の質問に戻ると、この市場は壊れやすい。それを理解していなければならない。これらの株は流動性が高い。あなたはポートフォリオの中で、それらを2倍のover weightにしたくないだろうが、しかし、短期的にはその方向に向う。そして、もしショックがくれば、最も可能性が高いであろう3番目のgrowth scareが来れば、それらnifty 50銘柄に最大の影響を及ぼす。growth scare/リセッションの心配はそれら全ての株を等しく値下がりさせる。それはこんにちのリスクではないが、我々は第3四半期のリスクだと思ってみている。
ーあなたが救命艇が減っていると言ったので、KKR ピート・スタヴロスとの会話を思い出した。公開株市場が縮小していると言っていた。1995年以来、公開企業の数が、確か、40%減った。公開企業の数が減ったので、救命艇の数が減ったと言えるだろうか?驚くべき企業は公開されていない、と。
・もしかしたらAI物語のせいかもしれないが、人々は、穴があいていてもある種の船を救命艇と考えるようになった。それは間違いである。潮が満ちて、多くの船を間違った形で押し上げている。我々は顧客にAI WinnersとAI Pretendersと説明している。多くの企業が決算でAIと発言し、マルチプルを2段階押し上げている。それはAIの勝者を見つけるよりも気を付けるべきだ。AIの勝者とは、明らかなビジネスプランを持っているとか、AIで潜在的なベネフィットを受けられるとか。AIを作る側か、使う側かは問わない。明確にしておくと、我々はAI利用者により重きを置いている。AI提供者は既に織り込まれている。今は誰がこのテクノロジーをうまく使えるのか?どのようにAIで他社に勝てるのか?である。
ーそれらの企業の名前は教えてくれないですよね?
・我々はレポートに書いたので、顧客は見られる。毎週公表している。
長く/詳しく説明しているので、補足する必要はないと思いますが・・・、
・株式市場はソフトランディングを完全に織り込み、モーメンタムに支配されている。
今はそれに従い、高品質(フリーキャッシュフロが潤沢、借金が少ない・・・)な成長企業を買うべきだ。それらはテックセクター以外にもある。
・しかし3つの潜在的リスクがある。確度の低い順に、高インフレ再燃、国債利回り急騰、経済減速。
経済減速となれば、今買われている株が大きく売られるだろう。
今日時点、経済減速が起きる可能性はない。起きるとして第3四半期。
・AI提供側の株は成長が価格に織り込まれているので、AI活用企業を買うべきだ。その企業名はレポートを買って読んでネ!
だ、そうです。
元々「株は高すぎる」と弱気をはいていたマイク・ウィルソンですが、株式市場には逆らえず「上がるんだから、高くても買うしかない」と一時的な強気に転換。
「高品質な株を買え」と言いつつ、「市場はモーメンタム駆動」「ポートフォリオの中で値上がり銘柄のウェイトを高める方向に向え」と若干矛盾したことを言っているような気がしますが、どちらの要素も満たす企業の株を買え、という意味だと思います。
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