塾長です。
先週は大物投資家がテレビ/インターネット放送に出演しました。
昨日は債券王ガンドラック。
今日はBloombergによるレイ・ダリオのインタビュー(多分7/2のもの)。30分の長編:
・今のパラダイムでは、かつては存在しなかった3つの力が影響を及ぼしている。
金融政策には3つのステージがある。1945年に最初にサイクルに入った。1944年、ドルが準備通貨となり、ゴールドに結び付いていた。1971年にゴールドとの結びつきが終了。中央銀行がマネーを刷ると、クレジットが作られ、需要が増える。
金利がゼロになると、その効果がなくなる。それは2008年、最初に起こった。私が第2金融政策と呼ぶものだ。マネーを刷り、金融資産を購入する。それが様々なことを引き起こした。世界中に流動性がいきわたり、資産価格を上昇させた。さらに環境が資本主義にとって良かった。企業減税など。それら全てが資産価格を押し上げた。それは、貧富格差増大にも寄与した。
今我々はその長期債務のサイクルの中にいる事を認識するのが大切だ。それが包括的な影響を与える。[これが第一の影響力]
長期債務サイクルに関連して、貧富格差のサイクルがある。戦争の後に、繁栄の時期が発生する。平和な間に。そこでは多くのクレジットが作られる。技術革新が起こる。それが貧富の格差を生む。現在、貧富の格差は1930年代以来最も大きい。政治の格差も大きい。これが巨大な影響となっている。第2番目の影響力だ。
第3の影響力は、ある強国が出現し、既存の世界、そのリーダーである米国に挑戦している。このサイクルも時間とともに起こるものだ。この競争、様々な形の戦争、例えば貿易戦争が別の要素となっている。
これらの要素はコロナ前からあったものだ。そこにコロナ危機が発生した。
これらを理解した上で、金融政策を論じたい。マネーの価値とは。それが今の市場、貨幣にどう影響するのか。
・通常の世界、通常の時代では、中央銀行がマネーを[刷って]貯蔵する。銀行がやってきて、そのマネーを借りて、さらに貸し出す。それがクレジットシステムを回る。全ての金融資産は競いあい、[マネーは]広くいきわたり、クレジットが拡張する。最後にはインフレが起こり、中央銀行は金融引締めを行う。それがサイクルだ。
現在はその通常のシステムが機能していない。今日、経済と市場は、中央政府と結びついた中央銀行によって駆動されている。FEDによる資産買い上げによってだ。
2008年金融危機では、FEDは銀行を守るために行動した。今は全経済がシステム的に重要で、FEDは企業にまでカネを貸しだした。Fallen angelと呼ばれる投資不適格な企業に対してもだ。
マネーの価値とは何だろう?欧州では、中央銀行が[一般の]銀行に-1%の金利で貸し出しを行っている。金利を払わなくて良いどころか、金利がもらえる。interest creditだ。中央銀行は経済的意図ではなく、政治的意図で行動している。これは米国でも、日本でも状況は同じ。マイナス金利、ゼロ金利の環境では、借り手は元金を返済する必要がない。中央銀行は、その債務の持ち主になる意図がある。これによって、マネーの配置(allocation)は、自由市場におけるマネーの配置と違ったものになっている。
・中央銀行はシステムを浮上させておくために、この行動を取り続ける意思があるし、そうする必要がある。中央銀行のバランスシートは莫大なものになる。
私の準備通貨の研究を行った。オランダのギルダー、英国のポンド。歴史的に、交代が起こる。政治的混乱などで。
[話を戻すと]中央銀行は、経済環境が良くなる(acceptable)まで、今の政策を継続する。
・経済には、モノの需要と供給のリアル経済と、マネーとクレジットの需要・供給で動く金融経済の2つがある。資産の価格は、リスク無しの資産に対するリターン(今はほぼゼロ)とリスクプレミアムで決まる。米国債は1%以下の利回り、米国企業の債権は1%を少し超えるくらい。米国以外であれば、国債の金利はほぼゼロだ。株価を考えるためには、株の[リスク]プレミアムを考える必要がある。中央銀行はマネーをシステムに供給している。マネーは良いリターンを求めて資産の上を移動する。現金に対する株のリスクプレミアムは4%から2%に下がったとしよう。PEはその逆数になる。例えば、需要によって、PEが20倍から40倍になるとする。それはあり得ない事のように思える。しかし、ゼロ金利よりは、あり得そうだ。リスクプレミアムはシステムに供給された流動性の量によって変化する。PE倍率をトラディショナルな方法で使ってはいけないという事だ。資本市場が経済やPE倍率、リスクプレミアムを決める。リアル経済が資本市場を駆動する力の方が弱い。
こう考えてみて欲しい。あなたは現金を持ちたくない。債券も嫌だ。なぜなら金利が無いから。そして、中央銀行はマネーを刷り続け、供給する。その環境で、どこに富を蓄えておくべきか?歴史的には、マネーの価値の逆数(reciprocal)となる。ファイナンスの世界では、企業はマネーを借りて株を買っている。富を蓄える場所は株式だ。もちろんどんな株でも良い事にはならない。経済的にセンシティブでないもの。もしくは、ゴールド。マネーの価値の逆数になるもの。
歴史的に、流動性の問題が起き、マネーを刷り、金融資産を買い入れると決めた時点で、市場は底を形成し、金融資産はインフレを起こす。
・中央銀行の限界は、マネーの需要に関係する。マネーを刷るために国債を発行する。中央銀行は国債を買入れることができる。
今の時代に最も似ているのは、1930年~1945年だ。まず不況がくる。不況ではゼロ金利にする。マネーを刷り、金融資産を買い入れる。そして財政出動を行う。それが負債を作る。そして戦争。マネーとクレジットが求められているという意味で今と同じ状況だ。マネーを刷り、債務を作り、中央銀行がその債務を引き受ける。この情況で、準備通貨に代わる資産が見つかると、そちらに資産が逃げて行く。中央銀行は国債をもっと多く買い入れるか、金利を上げるか、のどちらかを行う。債務が多すぎると金利は上げられない。また、金利を上げてしまうと、資産価格が下がる。そうなると非常にまずい。ドルは特権的である。その特権を利用している。もしドルに代わる資産が現れたら、市場のみならず世界な破壊をもたらすだろう。
1944年以来、米国はゴールドを裏付けにマネーを刷ってきた。持っているゴールド以上に。そして、1971年、そんなにたくさんのゴールドを持っていると言えなくなり、[金本位制をやめ、]ドルの価値が下がった。ドルの価値は米国の競争優位性などに依存している。ドルを支えているものの一つは、非常に多くのドル建て債券があるという事実である。ドルの需要が作られる。債務は返済されるか、デフォルトを起こすかである。その時点でドルの値上がりを抑制し、ドルを弱くする。長期的には資本の流れが変わる。(訳注:この辺り、間違っているかも・・・。要するに、今のようにドルを大量に発行できるのは、米国債を買ってくれる人(国)がいるから、と言っている)
中国は大量のドル建て米国債を保有している。金利が下がり、政治的対立が深まる中で、保有し続けようと思うだろうか?中国は重要なピースだ。金融と債務のサイクル、貧富の格差に、中国問題が加わる。これが全体を理解する上で役立つ。
・中国を考える上で、我々はシステムを見るよりも、良い人、悪い人と考えがちである。米国には米国のシステムがあり、中国には中国のシステムがある。中国を敵と考えるよりも、チェスの対戦相手と考えてはどうだろう。歴史的にみて、大国があらわれ、既存の大国に挑戦してきた。これは、特定のルールに従って行うゲームではない。中国は彼らなりの手段でゲームに勝とうとし、我々は我々の手段で勝とうとする。問題は、米国がどのようにうまくplayするかだ。基本に立ち戻るべきだ。基本は教育、共通目標に向けての団結。中国のシステムは素晴らしい。彼らはとても頭が良い。歴史的観点を持ち合わせている。これが私の理解である。
ということで、中央銀行に支えられた株式か、どこの国にも属さない/影響を受けないゴールドを持ちましょう!
ちなみに、金融・経済サイクルについては、Ray Dalioが別の動画を作っているので、そちらを参照(日本語):