塾長です。
一昨日(12/18(金))、Jefferiesのデイビッド・ザボスがNew Yorkからの脱出という(有料)記事を書いたので、インタビューを受けていたヨ:
前半、ここ10年くらいでNYが高級化、政治的に偏るなどして、環境が悪くなった。これは9/11のように人は戻って来ない、長期的な流れだ。と説明している所は省略。
マクロにどういう影響を与えるか語っている3:58から。
・ストレートな議論だ。Goldman Sachsの資産運用グループ、JPMの多くが移転する、Moelisの銀行員はどこに引っ越して働いても良い(※1)、などの事例がある。このコスト削減は、労働者とだけ分け合うのではなく、株主、事業オーナーとも分け合うことになる。これはディスインフレのストーリーだ。NYの生活費は高い。それが、住居、食料、デイケア、教育、通勤に使うカネが減るようになる。企業間の競争に依存するが、給与の低下もある。これらの人が使っているサービスの価格低下につながる。
住居も全てを足し合わせて考えると、価格低下したことになるかも知れない。モンタナ州ボーズマン、コロラド州ボールダー、マイアミ、に引っ越すと考えると。
これがディス・インフレだ。まるで、中国に事業をアウトソースしてきたように、NYの少しの部分を国内にアウトソースするようなものだ。一つのディス・インフレ傾向だ。私のディス・インフレの見方をエキサイトしてくれる。
これをネガティブなディス・インフレだと考えるべきではない。確かに、NYで高級住宅を持っている人には悪い影響かもしれないが。成長という観点ではプラスだ。我々エコノミストの間では、これをpositive supply shockと呼ぶ。製品を安く作れるという事。Work-from-Homeとは、そういう事なのだ。
今後10年ギグ・エコノミーが広まると言ってきた。10年が10か月に、強制的に短縮される。
Work-from-Homeに限らず、採用してきた様々なテクノロジーが、巨大なディス・インフレ要因となる。
・私は90年代からテクノロジーが引き起こすディス・インフレの考えを持ち、それについて書いてきた。そして、それに人口動態が作るディスインフレを加えてきた。
私はpositive supply shockがビジネスサイクルの原動力になると常に信じてきた。私は、デマンドサイド・エコノミストというより、サプライサイド・エコノミストだ。フィリップスカーブや、ケインズ経済学を持ち出したことはない。技術革新がビジネスサイクルの原動力になると、私のDNAに刻み込まれている。
この考えは、90年代では非主流だった。長期債が7.5%、短期債(?)が3.5%、誰もが金利は2桁に戻ると考えていた。
この考えを持ったまま、今年を迎えた。誤った金融政策により金融引締めが起こらなければ、私にとって、金利上昇や、インフレへの恐怖からリスクオフに向かうというのは考えられない。
あまり注目されていないが、昨日パウエルが(FOMC後の談話で)こんな事を言った。FOMCは、TIPS市場によるインフレ期待が2%に近づいているのを見て喜んでいると。彼らは、2.25、2.5%になったらもっと喜ぶだろう。多くの人は「我々は日本化してしまった。インフレは2度と起こらない」と考えている。そのリスクはある。2%以上のインフレとなるよりも、もっと大きなリスクだ。しかし、米国には、ディスインフレの筋書きがある。数十年も持ち続けている。債券市場にいる人がインフレについて語りたがる。私もそうなって欲しい。しかしこの三十年、彼らを衰えさせるのが、良いトレードだった。
※1:
Ken Moelis gives his bankers blessing to move wherever they want
直訳だから伝わらいかも・・・。言っているのは、こんな事:
米国は90年代から技術革新によってディスインフレ(モノ&サービス価格下押し圧力)をかけてきた。それが生産性向上となり、競争力が高まった。ディスインフレは悪者ではない。大都市から地方都市へ人が移動するのは、価格の下押し圧力になる。地方に仕事が移転するのは、中国やインドにアウトソースが進み生産性が上がるのと同じく、正の効果をもたらす。日本のようにはならない。
このディスインフレについては、ガンドラックの主張と同じ。ザボスはポジティブだけれど、ガンドラックは比較的悲観的に語っているのが違い。
ガンドラックは(ポジショントークとして)株にネガティブな傾向があるので、その違いだけかも知れない。「債券王」としては、そう簡単に企業業績が上がるので株を買え!とは言えない。
ザボスは所詮(?)エコノミストなので、口先だけだろ、と軽視する事も可能だが、米国企業がここ30年技術革新を原動力の一つとして成長してきたのを事実として認める必要はあると思ふ。
面白かったので、Bloombergのこんな記事も貼っておこう:
在宅勤務ブームは恒久的、賃金カットは覚悟せよ-コロナが残す問い - Bloomberg
さて、ここから雑談。
Escape from New Yorkを見た事がない人は、是非。
ジョン・カーペンター監督。カート・ラッセル主演。
80年代~90年代初めの怖い頃のNYを知っている人にはとても楽しめる映画になっております。
知らなかったとしても、ロバート・ロドリゲス監督「Planet Terror」
辺りが好きな人にも向いている。
ザボスは主演のカートラッセルに(外見が)似てるって言われたかったんじゃないかな?似ているのは、髪型と髭だけですが。
イジッってもらえなくて、可哀そうでした。
アイパッチして出てくればよかったのに。