塾長です。
昨日(米国5/31)はメモリアルデーで休場のため、株に関する面白ニュースはありません。
その代わりと言ってはなんですが、エリザベス・ホームズ、企業による組織的詐欺等についてのお話です。
単なる雑談。
エリザベス・ホームズ(Elizabeth Homes)はTheranosという名前の会社設立。「血液1滴から200種類以上の病気を診断する小型装置(炊飯器二つくらいの大きさ)を開発する。それによって検査費用は2ドルになる」と嘘の宣伝をして投資家からカネを集めました。2018年、SECから詐欺で訴えられ、係争中。
その辺の事情を詳しく知りたい人は、このビデオを見てみて下さい(日本語字幕入り):
2019年、HBOがTheranos事件のドキュメンタリーを作っている。こちら、その予告編。日本でも見れるようにして欲しい:
さて、前置きが長くなりましたが、ホームズの裁判が開始されるという事で、再び注目が集まっています。
その一つの理由は、先日検察がホームズの当時の豪勢な暮らしっぷりを陪審員に示す事に判事が(一部)同意したから。
彼女はTheranos CEO時代、プライベートジェットで飛び回り、豪華なホテルに滞在し、買い物三昧だったと言われている。お堅い企業関連ニュースの中にあって、(認めたくなくても、誰もが好物である)ゴシップ誌的な側面がある。
ホームズ側は、豪勢な暮らしと詐欺は関係ないと主張したが、裁判官は認めなかった。但し、どんなブランドのバッグを買ったとか、詳細の開示はできないとした。
Zeros TVでは、カーソン・ブロック、ダン・デイビッド、ソーレン・アーンダールの3人が、ホームズ裁判から企業詐欺について雑談していた(ビデオ開始後14分から):
雑談っぽいので、ポイントだけ書くと
・ソーレンが教えているテキサス大学オースチン校のMBAクラスでのこと。ホームズが刑務所に行くと思うか?と質問したところ、Yesと答えた学生は20~30%だった。刑期が3年以上と回答した学生はゼロ。彼らはシステムに対して不信感を持っている。
・Enronの時代は、不正や詐欺を行った企業経営者は刑務所に行った※1が、変わってしまった。
・変わった理由の一つは、Enron事件が会計事務所Arthur Andersenを潰すことになり、強権的な捜査に対してセンシティブになった事による。
・マーティン・シュクレリ(Martin Shkreli)の事件では、彼は刑務所に行っている(注:現在服役中で、2023年に釈放予定)。興味深いのは、シュクレリ事件で投資家は損をしていない。ホームズの場合は逆。シュクレリはニューヨークで行われた金融詐欺であり、ホームズはサンフランシスコでの技術詐欺であるのも考慮すべき点かも。
・シュクレリは単なるアホであるが、ホームズは妊娠したりして、被告としての立ち回りが上手い。人間を上手に装うサイコパスだ。
・話を欧州に移して、Solutions 30※2が崩壊した。カーソン・ブロックが長年ショートしていた。
欧州では、企業の不正は非常にまれで、それが明らかになったとき誰もが衝撃を受ける。アメリカはもっと現実的。企業の不正は一般的であると認識され。アメリカ人は、それを受け入れている。意気消沈させられるが。
Wirecardは2016年からショートされていたにも関わらず、(不正の)アクセルを緩めなかった。それは、業績や株価が上がれば、不正は見逃されると思ったのかも知れない。Solutions 30も同じ。欧州には、そういったメンタリティーがあるのかも知れない。
企業不正防止は、企業不正は起こるものだと認める事から始まる。
Theranos、Enron、Turing Pharma(シュクレリ事件)、Wirecard、Solutions 30の事例を振り返ると、そもそも企業による詐欺、不正って何だろう?と考えさせらます。
もちろん、法律に違反すれば詐欺。ありもしない売上を計上したら詐欺。持ってもいないのに、「〇〇ができる技術を持ってます」と言うのは詐欺。
では、〇〇ができる技術を開発できると”信じて”の発言だったらどうだろう。「30年後人類は火星に移住する、その技術を開発している」と言ってカネを集めたら詐欺だろうか。そのカネでプライベートジェットを飛ばしたら詐欺だろうか。内部メールで「いやー、そんな技術できっこないよね~」などのやり取りが見つかれば詐欺。見つからなかったら?
水素トラックと水素インフラを開発・展開すると言ってカネを集め、できなかったらどうだろう。
通信会社のCEOが「通信事業とコンテンツ事業の二つを持てば、相乗効果が生まれる」と言って企業買収し失敗、自身は巨額の報酬を得ていたら、詐欺と言えるだろうか。
日本の重電会社が米国の原子力発電設備会社買って、うまく行かなかったケースは?
最近も日本企業の海外大型買収が続いているけれど、同じような臭いがしないでもない。
賢く投資するためには、企業や経営者は嘘を付くものだと認識し、その嘘を見抜く力が必要って事でしょうか。
その力を持ってなければ、インデックスに投資しておけ、と。
Corporate America、金融業界、政府も信用できないなら・・・、そんなふうに考えると、Bitcoinを買ってる(若い)人の気持ちが理解できてくるかも知れない。
みんな繋がっている。
※1:Enron CEO ケネス・レイ(Kenneth Alan Ray)は有罪確定→保釈→心臓発作で死亡したので、刑務所には行っていない。CFOのアンドリュー・ファストウは刑務所に行った。
Enron事件の捜査に関しては、こちらの本に詳しいらしい(未読):
※2:Solutions 30事件はここら辺を参照
https://www.ft.com/content/1598f613-800c-4dcd-abde-b542f07b23cd