塾長です。
今朝、Bianco Research ジム・ビアンコ(Jim Bianco)がFEDの利上げ、マクロを語っている動画(2月9日録画)を見たので、ポイントと思われる部分を記しておきます。1時間モノなので、相当省略しています。
FEDの優先順位はインフレ対応。成長(=雇用)ではなくなった。インフレを収めるため、金利を大きく上くげる。歴史的には、FEDが金利を上げ始めると、ヤメ時が分からないので、何かを壊すまで上げ続ける。何かを壊すとは、市場の急落であったり、リセッションになったり、金融システムをダメにすることだ。2019年はREPO市場を壊した。
FEDが利上げし続けると、イールドカーブの反転が起こる。それがシグナルとなる。イールドカーブの反転を起こすには、FFレート2%で十分だろう。
FEDが株式市場を支えると考えるのは間違いだ。今までFEDが株式市場を支えていたのは、成長を優先していたから。今はインフレを抑え込む方を優先するから、株式市場を支えない。
なぜインフレ対応が成長より優先されるのか?それは、政治だ。Federal Reserveが3年ごとに行うサーベイにおいて、大衆の40%は貯蓄1,000ドル以下で家を借りている。彼らはインフレに苦しめられる。それは既にデータとして表れている。ミシガン大学消費者態度指数は10年来の低さ。大統領支持率、議会支持率が減少。政治的に優先度がインフレにあるのだ。
逸話的な話ではあるが、シカゴのAmazon配送センターでは、仕事についたボーナスとして$3,000、時給23ドルで人を募っている。年収にして$48,000だ。
全ての世代は、世代を形作る何らかの経済的イベントがあるものだ。前の世代を作ったのは世界金融危機であった。その前はドットコムバブル崩壊。今回は、1年間の自宅軟禁である。
これによって、人々は在宅勤務、自由な時間に働くことを選ぶようになった。もうコロナ前には戻らない。Amazonが時給23ドルも出さなければ労働者を集められないのは、このためだ。人々は気づいてしまったのだ。もうディストピアに生きるのはコリゴリだと。それがどんな生活だったかと言うと、毎日満員電車に揺られて、小さなキューブのあるオフィスで働くものだ。銀行は初任給を$110,000に設定した。そうでもしないと、ニューヨークのオフィスで毎日朝から晩まで働きたいと思う人がいないからだ。
米国では、1/3から1/2の職業が何らかの形のでリモートワーク可能だろう。しかし、まだ多くの人がそれを認めたがらない。
モノの値段が上がっているのは、サプライチェーンの問題。それが起きている理由は、人々の買うモノが変わったから。人々が家に留まるようになり、2019年よりももっと多くのモノを欲したのだ。
今、消費者は体験にカネを使っている。American Express CEOは決算においてビジネストラベルが1/3になったと言った。その一方で、個人旅行が記録破りの大盛況だ。TSA(米国の空港でセキュリティーチェック等をやっている国の機関)のデータによると、空港利用者がパンデミック前の90%に達したそうだ。ビジネストラベルが1/3になったにも関わらず、だ。
人々は家で働くようになり、パンデミック前より多くのモノ、異なるモノを欲し、サービスを消費し、それによって物価が上がるのだ。企業は単に既存の製品を増産したり、同じサービスを提供するのではなく、新しい消費行動に合わせなければらない。
これもまた逸話的な話ではあるが、最近(自分の住んでいるシカゴから)NYとフロリダに行った。NY行は半分しか乗っていなかった。フロリダ行は航空会社から「オーバーブックしているので異なるフライトに変えられないか」とひっきりなしにテキストメッセージを受け取った。未だ航空会社はビジネストラベルが戻ると考えているだろうが、(家族旅行向けに)フロリダ便を増やし、ビジネスクラス席を減らさなければいけない事に気づくべきだ。こういった摩擦やインバランスが、インフレを起こし、インフレが長く続く理由になっている。
CPIの30%を、ユーティリティや保険を含む住居が占めている。その大部分がOwner's Equivalent RentもしくはRents of Primary Residenceと呼ばれるものだ。その二つは基本的に同じもので、持ち家と、借家の違いでしかない。Owner's Equivalent Rentは、全米各地で家賃の変化をサンプリング調査して導き出す。家賃というものは変化が大きくないので、調査は1年に2回しか行われない。もう少し正確に言うと、毎月、調査対象の1/6ずつを調べる。6か月たてば、全てのサンプルを調査し終える事になる。CPIに使われるデータで最も古いものは、6か月前のものなのだ。インフレが第一四半期もしくは第二四半期でピークを付けると言う人がいるが、そうはならない。過去に上昇した家賃が後から数字として出てくるからだ。
隣人や友人と株の話をすると、出てくる名前はS&P500がほとんど。たまにFAANGとARKKくらい。何の株を持っているか?と聞くと、ほとんどがS&P500。もしくは、ファンドマネージャーに任せている。株式市場がETF化してしまった。それによって、今のところ、S&P500は持ちこたえている。今後、利上げがあり、長期金利が上昇すれば、国債やMMFが魅力的に見えてくる。そうなれば、S&P500はRussell200のように下落するかも知れない。
それでも株に投資するのであれば、パンデミック後の世界に恩恵が得られるものを選ぶ。人々はライフスタイルがが変わる、家を買い、そこで使うモノを買う。
オフィス不動産以外で嫌いなセクターは銀行だ。一時的には良いだろうが、長期では他のセクターに劣っている。銀行は利益が出ていても、キャッシュフローが潤沢でも、株価に反映されないのは、ビジネスモデルが壊れているという市場のメッセージだ。欧州と日本の銀行株をみて欲しい。日本の銀行は、1987年に株がクラッシュして以来いまだに回復していない。ドイチェバンクの株価は、1983年と同じレベルだ。ドイツではNinaの99 luftballonsがヒットした年だ※1。しばらくは金利上昇などがあって株は上昇するかも知れないが、いずれ非中央集権化された金融(decentralized finance、DeFiとも呼ぶ)に打ち壊される。タクシー業界がUber、Lyftに壊されたように。SEC等による規制は銀行を守る役に立たない。タクシー業界も市議会などを動員して、Uberの非合法化を図ったが、結局は負けたように。
(ここからDeFiの話に移るので、割愛)
ジム・ビアンコも動画内で解説していますが(その部分は要約から割愛)利上げ予想はこちらからチェック可能。Probabilityというボタンを押下。
Countdown to FOMC: CME FedWatch Tool
それによると、市場は来年半ばにFFレート2%台を予想。ジム曰く(レベレッジがかかり過ぎた経済なので)2%にもなれば何かがおかしくなるな、そこで打ち止めだろう、とのこと。逆に言うと、その辺りまでは株の低迷が続くかも知れませんネ。1月初旬から株買い付けを増額していますが、2年間この調子で買い増しできるような配分にしておこうかしら。
FFレート2%の世界では、10年債に2.5%くらい付くのでしょうか?これはこれで楽しみ。
ジムが銀行嫌いなのは、その業界出身だからかも知れません。「規制業界は新規参入者に壊されるから、株は買わない方が良い」と単純に言ってしまうのも、なかなか危険な香りがします。銀行だけでなく、電力や防衛なども買えなくなってしまいます。長期で考えれば、再エネや、安価なドローンに利益を食われるかも知れませんが、それはいったいいつなのよ?と。
※1、NINA 99 Luftballons: