塾長の資産運用

米国株大好きの塾長が資産運用と関連ニュースを語る。投資は自己責任でネ!

トム・リー「物価は6か月以内2%に低下する」、ジム・ビアンコ「物価は何年も高いままだ」。その中間は無いの?

塾長です。

昨日(米国7/29)、7月最終日の米株市場は右肩上がり。

 S&P500、4,130(+1.42%)

 Nasdaq、12,390(+1.88%)

【米国市況】S&P500種、月間で2020年以来の大幅高-ドル133円前半 - Bloomberg

S&P500種株価指数は・・・月間ベースでは2020年11月以来の大幅高となった

 

 

債券・為替・コモ:

 原油、98.30

 10年債、2.6420

 ドル円、133.1900

 Bitcoin、24,079

 

 

経済指標:

 第2四半期 雇用コスト指数[前期比]、1.3%(予想1.2%)

 6月 個人所得[前月比]、0.6%(0.5%)

 6月 個人支出[前月比]、1.1%(0.9%)

 6月 PCEデフレータ[前年同月比]、6.8%(6.7%)

 6月 PCEコアデフレータ[前月比]、0.6%(0.5%)

 同[前年同月比]、4.8%(4.7%)

米雇用コスト指数、4-6月は予想上回る-インフレ懸念強まる - Bloomberg

米個人消費支出、実質ベースで小幅増にとどまる-インフレが影響 - Bloomberg

コア価格指数は前月比0.6%上昇(予想0.5%上昇)と、ここ1年余りで最大の伸び。
貯蓄率は5.1%に低下し、2009年以来の低水準。前月は5.5%だった。

 

 

30年固定住宅金利が6%から5%台に下がったことで、住宅市場が再度勢いを取り戻すかも?というレポート;

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金融政策:

昨日(29日)でブラックアウトピリオド終了。FED高官がしゃべり始めた。

アトランタ連銀総裁、米国は景気後退入りには「ほど遠い」-利上げ続く - Bloomberg

ウォラーFRB理事、米労働市場の軟着陸は可能性高いシナリオ - Bloomberg

ミネアポリス連銀総裁、利上げ手控えまで「長い道のり」-NYT紙 - Bloomberg

FOMCはインフレ率を2%に引き下げるとの決意で一致している。インフレが2%に低下する軌道に十分に乗ってきていると確信するまで、われわれは必要なことを続けるだろう。そこに至るまでには長い道のりがある

 

 

財政政策:

CNBCが再び元Cypress CEO T.J. ロジャースにインタビュー。質問は2つ、半導体市況とCHIPS Act通過について;

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  • 半導体市況はマクロが支配。9月ほど前にこの番組に出た時、半導体不足で自動車が作れない、が話題だった。その時、私は「半導体産業は過剰反応する」と言った。それが現実になった。半導体が余っている。
  • 半導体工場を国内に戻す(re-shoring)のは何の解決にもならない。完全なる詐欺。補助金半導体産業を傷つけるだけ。
  • IntelCFOを会社のトップに据え、10年間ライバルに先行を許した。ライバルのAMDは、女性で、博士号を持ち、アジア人であり、MIT卒を雇い、Inelの尻を蹴った。競争(competition)が半導体産業を強くするのだ。政府の補助金(government port)ではない。
  • CHIPS ACTはIntelにとってfree moneyなので、彼らにとっては良いだろう。しかし、補助金を受けられない会社もある。半導体産業にとっては良くない。

 

 

地政学

CHIPS ACTが下院を通過。あとは大統領の署名を待つばかり。

中国は「世界の半導体サプライチェーンを歪める」と反発。

台湾は「台湾には50年間に渡る変革、投資、人材が揃っており、その地位は揺るがない」と強がってみた。まぁ(米国に中国からの侵略を守って欲しい)台湾の立場では、反対はできない。

韓国、日本からは反応無し(Google検索した限りでは);
U.S. Congress passes long-awaited bill to boost chipmakers, compete with China | Reuters
China says U.S. chip act will distort global semiconductor supply chain | ロイター
Taiwan says 'key position' in semiconductors won't be shaken as US passes chip act | ロイター

 

 

個別株:

石油会社の決算;
エクソンとシェブロン、ともに過去最高益-エネルギー価格高騰追い風 - Bloomberg

 

珍しくP&Gの見通しが悪い;
P&Gの株価下落、通期見通しが予想下回る-同業他社に見劣り - Bloomberg

 

 

強気派Fandstrat トム・リーがCNBCに出演;

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  • ボルカー時代がそうだったように、株式市場はFEDの政策転換の前に上昇する。
  • S&P500年末目標は4,800。
  • 物価は劇的に下がっている。6か月のうちに、CPIは2%を下回る

なんて事を言っている。大丈夫か???

 

バランスを取るためにも(インフレ率は下がらないと言っている)ジム・ビアンコのインタビューを載せておきましょう;

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直近の株高はショート・スクイーズが貢献している。

FOMC後、パウエルが語ったのは3つ。(1)FFレートを0.75%上げる、(2)中立金利に近づいた、(3)フォワード・ガイダンスを無くす。市場はこれを利上げサイクルの終わりだと解釈した。それが株高につながった。

FEDは中立金利をインフレ率+0.5%と考えている。FEDは長期的なインフレ率を2%としているので、FFレートを2.25ー2.50%したのだから、中立金利に近い、と言った。それは長期的インフレ率が2%であるという仮定に基づいている。

それは誤りだと思う。2020年3月、高いインフレが続く新たなレジームに入った。FEDはコロナ前のモデルを使っている。去年、そのモデルを使って、インフレが一時的である(transitory)との間違いを犯した。そのレッスンが活かされていない。FEDもWall Streetも間違っている。

Wall Streetのエコノミストは、80年代から常にインフレ率が2%に戻るものだと言ってきた。いくらインフレ率が上がろうとも、それがピークであり、2%に戻ると言い続けてきた。

コロナ前には、この仮説は正しかったかも知れない。しかし、コロナ後はそうではないだろう。コロナが経済を変えた。コロナ前には戻らない。これは40年代に近い。違いを説明しよう。1945年9月、2百万人の失業者を出した。戦争が終わったからだ。戦闘機や戦車を作る必要が無くなったからだ。その後、異なる経済となった。1947年、誰も「1944年の経済に戻る」とは言わなかった。2020年、1か月で1千4百万の失業者が出た。誰も異なる経済になるという考えを持てず、いつ2019年の経済に戻るのか?といった話ばかりしている。屈曲点を通過したのだ。on-shoringが進み、労働者不足が増大する。インフレ率は高くなる。9%ではないかも知れないが、4や5%といったところだ。その考えの元では、中立金利には程遠い。人々はまだインフレが一時的だと信じている。今年後半の重大な疑問は、インフレ率が下がる(moderate)のか?下げ止まる(resilient)だ。

infration swap curveは2%に収束している。これは12年間続いている。forward cuveについて一言言っておきたい。それは市場参加者の考えを表しているだけだ。何が起こるかを予言しているのではない。1年前のforward curveは、今年1回の利上げしか織り込んでいなかった。市場が考えている通りの事が起こらなければ、修正されるだけのこと。
もしインフレが長く続く(sticky)と気づいたら、流動性が支配する今の市場では問題となるだろう。今はインフレがすぐに収まり、高金利が長続きしないと言う考えに基づいてるが、私はそうなると思わない。

インフレ率を下げるためには、金融政策だけでは不十分。もっと広い議論が必要だ。2019年の経済に戻ろうとしてはいけない。例えば、大統領は「みんなオフィスに戻ろう」と言ってはいけない。「インフレ率が2%に戻る」と考えてはいけない、「インフレ率がいくらになるか分からない」が正しい。我々は慢性的インフレを抱えているのだ。その例を示そう。今、労働者の1/3が在宅勤務をしている。それはgoodsの消費を増やす。今日出たPCEでもそれが示された。それによってサプライチェーンの混乱が続く。昨日出たshipping journalのデータによると、港で待っているコンテナ船の数が最大になった。最悪期を脱したかもしれないが、問題は続いている。正常化には程遠い。Wall Streetは相変わらず「息をとめて我慢していれば、6か月、9か月のうちに、問題は消えてなくなる」と考えている。もしかしたら生産、サプライチェーンの問題を解消するためには$1Tのカネが必要なのかも知れないというのに。そういった(問題を正面から見据えた)議論をするまで、インフレは高止まりするだろう。

shippingの問題についてもう一つ付け加える。世界にある317の港のうち、最も効率が悪いのがLos Angels、2番目に悪いのがLong Beachだと言われている。チュニジアアルジェリア、ナイロビ、アルジェリアの方がそれらよりも効率が良いのだ。いかに我々の港が経済の変革に追従できないカ分かるだろう。これが慢性的なサプライチェーン問題を引き起こし、インフレ率が高止まりする理由だ。

中国のゼロコロナ政策も問題の一つだろう。そして、そのゼロコロナ政策が何年も続くと考えなくてはならない。今週、武漢で4人のコロナ患者が出ただけで、ロックダウンした。好きなだけ「理解できない」と首を振れば良い。しかし、それが中国の現実だ。中国はモノの供給元として信頼できない。Wall Streetはまだそれに対応していない。ベトナムインドネシア、もしかしたら米国に工場を移さなければいけない。中国と米国間の政治的な悪い関係も影響する。

米国はリセッション入りしている。浅いかも知れないが、リセッションである。政権がリセッションだと言わないのは、今に始まった事ではない。1978年、カーター政権時代、エコノミストアルファード・カーンが「インフレが治まらなければ、depressionが起こるかも」と言った。ホワイトハウスは怒り狂ったので、彼はdepressionとbananaと言い換えて「we are going to banana」と言った。recessionと呼ぶ前は、depressionだったのだ。1930年、panicsと呼んでいたのだが、フーバー政権がそれを嫌い、depressionという用語を発明した。1978年、depressionが嫌で、recessionを発明した。我々は新しい用語を作る最中にあるようだ。ホワイトハウスとrecessionの関係は90年間変わっていない。もうこの質問(recessionかどうか?)はやめよう。景気後退の程度が問題である。

株式市場は、FED金利を下げる前にボトムを付けることはあった。直後の場合もあった。ポイントは、FEDがリセッションを前にパニックになり利下げをするかどうか。まだその時期は来ていない。市場は、9月0.5%、11月0.255利上げを予想している。私はそれ以上になると思っているのだが、そうでなかったとしても、4か月のうちに0.75%利上げがあるということ(なので、株がボトムを付けるには、まだ早い)。

今後数か月、最も注目すべきデータは物価である。今、二つの議論が対立している。中央銀行とその周辺のエコノミストは「FEDのフォーカスはインフレである」と言っている。住宅価格が下がろうとも、株が下がろうとも関係ない。インフレが治まるまでタカ派でいる。一方、Wall Streetのフォーカスは成長(growth)である。2期連続のマイナスGDPは悪いニュースであり、FEDは利上げを止めるべきだと。Wall Streetは構造変革などせず待っていれば、インフレ率は2%に戻ると仮定している。
私の考えでは、FEDは去年最大の間違いを起こした。1年前に利上げを開始すべきだった。彼らはインフレ対策をしなければならない。GDPは名目7.8%伸びた。これは景気が良いと言えるだろう。しかし、インフレ率が8.7%なので、実質-0.9%。(実質GDPをマイナスにしないため、名目GDPを上げるか、インフレ率を下げるか?と考えると)インフレ率を下げる方を選ぶ。今はstagflationなのだ。過去30年間名目GDPを上げて、成長してきた。今の新しい経済状況では、インフレ率の方を何とかしなければならない。

住宅市場は縮小する可能性が高い。今は最もhotな市場が下げ始めた。Aspen、Jacksonhall、Hampton、など。しかし、問題はFEDが何をするべきか?だ。(住宅価格が下がっても)何もしない、というのも解になり得る。巻き添え被害(collateral damage)なのだから、と。

2023年、経済状況が悪くなり、需要が減少し、インフレ率が下がる可能性はある。経済を破壊してインフレ率を下げるというのは一つの方法だろう。私は、構造改革の必要性を認めて、長期的にインフレ率2%に戻る方を望む。

[このあと、もう少し続くが、省略]

 

「インフレ率がすぐ(今後6か月)下がり、FED金利を引き下げる」or「インフレ率は5%で高止まり、FED金利を5.5%(中立金利=インフレ率+0.5%とした場合)まで引き上げる」と両極端な話をしているけれど、実際起こることは「インフレ率4%、FFレート3%の状態が長く続く」だったりして。

FEDはインフレ率を2%に保つのが義務(mandate)なので、その状態を放っておけない?だから経済が壊れるまで利上げし続ける?

そうかも知れない。そうでないかも知れない。

 

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