塾長の資産運用

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【キャシー・ウッド】物価上昇は一時的、中古車バブル、既存自動車メーカーは苦境に陥る【1月、In The Know】

塾長です。

毎月第一金曜日、雇用統計が出る日、ARK キャシー・ウッドが動画「In The Know」をuploadしています。1/7(8日かも?)も出てましたので、ご紹介。

www.youtube.com

動画の詳細欄に「時間 - タイトル」形式で目次が書かれていて、興味のあるトピックだけを見ても良いかも知れません。

50分もある動画なので、ポイントを(独断と偏見によって)絞ります:

・Consumer Sentiment

 一番大切な指標は、ミシガン大学消費者態度指数だ。昨年11月、12月は、コロナパンデミック直後のレベルにまで落ちてしまった。11月、12月は商店のかき入れ時であり、重要な時期だったにも関わらずだ。11月の小売売上は0.3%上昇した。しかし、インフレを考慮に入れると、0.3%減少したことになる。年率に直すと、3.5%の減少だ。小売売上は、ほとんどが品物(goods)である。これにサービスを加えてみよう。品物(goods)とサービスを合計した実消費は、フラットである。この時期は小売りにとって非常に重要な時期であり、かつ、繰り延べ需要によってサービスが伸びると考えられていたにもかかわらずだ。

・Real GDP & Inventry

 2021年第三四半期GDPは2.3%増加した。期待値に大きく届かなかった。そして、実質的にその増加分全てが在庫にまわった。当時、誰もがサプライチェーンが問題だ、と言っていたその時期に、在庫が積み上がり始めていたのだ。消費者は必需品の値上がりに対して怒り始めたのだと思う。

 さらに興味深いことに、卸在庫(wholesale inventories)が10月、前月比2~2.5%増加した。年率に換算したら、25~35%だ。再度言うが、サプライチェーンが問題だと騒いでいた時期にだ。11月、卸在庫は1.2%増加。年率にすれば2桁だ。理由の一つは、消費の停滞だろう。11月、小売在庫は前月比2%増加だ。年率換算すれば24%。これらは見出しの数字では分からない事だ。

・Autos

 自動車は最も興味をそそる部分だ。Mannheim中古車指数が急上昇している※2。中古車価格は年率60%上昇している。それはCPIの計算に含まれている。我々は、中古車市場がバブルだと伝えているレポートをいくつか持っている。そのバブルは破裂するかも知れない。年率の中古車販売台数は減少している。(2021年)11月から12月はフラットだが、年率で見ると4%の減少。価格はようやく下がり始めた。前月比1.2%減少。年率にすれば大きい、約12%減少となる。年間を通して見れば、46%上昇であるが、価格は下がり始めている。中古車価格が下がり続けると考えられる理由もある。在庫が増加している。平常時は43日間分の在庫がある。今は54日間分だ。平均より相当多いという事だ。確か、最も少ない時で20日間分くらいだった。中古車価格上昇を目にした人達が、売り始めているのではないだろうか。価格が下がり始めれば、素早く売ろうと人が出てくるだろう。卸在庫は、Mannheimのレポートによると、通常時23日間分であるのに対し、今は33日間分だ。これは中古車の話。

 新車も興味深い。米国の新車販売は2021年4月、18.25Mでピークだった。10月になると自動車メーカーは決算を出し、イーロン・マスクを含め、半導体不足が解消に向かっていると言った。彼らは新車販売の落ち込みを半導体不足のせいにしていたよね。10月の新車販売台数は13M台だった。それは半導体不足のせいだったのだと。そして半導体不足が解消していると。それでは、11月はどうだったか。12.86M台しか売れなかった。12月は12.44M台だ。その最中に、EV売上は年率にすると2倍に伸びていた。何が起きていたのだろう?いくつかの要因の組合せだろう。消費者態度の低下や、消費者の好みの変化ーEVに対して好意的になっている事。後者は、CESで自動車メーカーが競ってEVについて語っている事から見て取れる。もちろん、electric showなのだから、EVを語るのは当然ではあるが。FordはF-150 Lightningの生産を倍増すると発表した※3。彼らが言わなかった事は何だろうか?それは、彼らの売上のうち、EVが占めるのは2~3%でしかない事だ。販売の97%が内燃機関車なのだ。生産台数の90%以上だろう。もし消費者が特に高額商品に大金を使いたくないと思い始め、かつ、EVを嗜好するようになったのだとすれば、それら(既存)自動車メーカーにとっては大問題だ。我々はそのデータを四半期決算で見ることができるだろう。アナリストには是非その点を質問して欲しいものだ。

 GM、Fordの株価は、EVに関する発表をすれば、急上昇することに気づく。よく考えて欲しい。バカげている。売上の2%でしかないのに。他の約98%はどうしたというのか?消費者嗜好がEVにシフトすれば、それらは不要になるのだ。その会社によるが、彼らのグロスマージンは10~20%。非常に低い。Bloombergの推定によると、2022年成長率は10~20%。米国自動車メーカーは、20%に近い方にいる。それ(それほどの販売数増加)は起きないかも知れない。失敗が許されない状況だ。彼らがEVに転換しているというアナウンスをたくさん聞くが、問題は、彼らのほぼ100%の基礎が時間経過とともに時代遅れてになるのだ。

前月比と年率換算の数字を(恣意的に)使い分けているのは、いかがなモノかと思いますが、それを割り引いたとしても興味深いデスね。ポイントは3点。

  1. 物価上昇は一時的。消費者態度が軟化、在庫が増加し始めている。
  2. (CPI上昇の一要因である)中古車市場はバブル。そのうち弾ける。
  3. 消費者が一斉にEVを買い始めたら、既存自動車メーカーはついて行けない。

中古車市場バブルの件は、ジム・ビアンコも指摘していました※4。

高インフレが治まるとしても、FEDは待てるのだろうか。待てずに利上げ&バランスシート縮小して、景気減速、停滞なんて事にならないとイイですけど。

 

 

※1:

Charts - Surveys of Consumer

から、Index of Consumer Sentiment、Last 10 years(http://www.sca.isr.umich.edu/files/chicsr.pdf)で見ることができる。

 

※2:

Used Vehicle Value Index

 

※3:

フォード、電動ピックアップトラックF-150 Lightningの生産能力を倍増へ | TechCrunch Japan

 

※4:

alibertarian.hatenablog.com

 

 

最近気づいたのですが、日興アセットマネジメントが「In The Know」を日本語翻訳(音声)して出しているので、そちらの方が良ければどうぞ。このblogを書いている時点では1月分は未だuploadされていませんが、そのうち出てくるでしょう:

www.youtube.com